第23話 すれ違いと仲直り

体育祭も終わり、これからクラスで打ち上げに行こうというムードだった。

実行委員のあかりは片付けがあるため後から行くとの事だったため私は先にしんじとなおとくんと行く事にした。

しかし、リレーが終わってからしんじはずっと同じクラスのあまり話した事ない女の子と一緒にいる。

相手の女の子がべったりという感じだ。


(なんか…嫌だなぁ…)


ブンブンと暗い気持ちを吹き飛ばすかのように首を振る。

そんな私の様子を見てなおとくんが心配そうに私を見てくる。

そんななおとくんもリレーで大活躍だったため、何人かの女子と男子と話してた。

でも、女子とはある程度距離を保ちほぼ男子と話すようにしていた。


(あかりはいいな。なおとくんに愛されて。私はどうなんだろ…)


そんな事を考えてると遅れてあかりがやってきた。

「どうしたの?」と話しかけてきたのでしんじの方を指したら察したらしい。

あかりに気づいたなおとくんもやってくる。

口ぶりから私の事を気にしてくれてたのがわかる。

この2人は優しいなあ。

そして突然しんじの恋バナが聞こえてきた。

しんじの隣にいた男子が付き合ってる人がいるか聞いている。

その隣にいるしんじにべったりの女の子も話にのる。

そして、私の名前が出る。

何となく薄々感じていた。女の子はきっとしんじのことが元から好きだったんだろう。

体育祭がいいきっかけと思って近づいたんだ。

私はもうその空間にいるのが限界になり、走って逃げた。


ゆうか「なんでこんな事で泣きそうになってんだろ、馬鹿みたい」


歩きながら涙をこらえる。

応援合戦の時の彼も、リレーの時の彼も今日は全てかっこよかった。

リレーの前も目が合うと笑ってくれた。


(やっぱり好きだなあ)


ガシッ

突然腕を握られる。

驚き振り返るとしんじがいた。

息を切らしながら追いかけてきてくれたのがわかる。


しんじ「捕まえた」

ゆうか「今頃なに?離して」


腕を振り払おうとするが離してはくれない。


しんじ「お願いだから、ちょっと話を聞いてくれ」


いつもより余裕のない声。

これ以上振り払うことは出来ないと思い頷く。




夜の公園に2人でベンチに腰をかける。


ゆうか「話って?」


なかなか話出さないのでしびりを切らし私が振る。


しんじ「打ち上げの時は悪かった。いや、その前から。あいつらの雰囲気に流されてお前のこと見ないで打ち上げ言って好き勝手やってたこと。ごめんな」

ゆうか「いいよ。しんじは団長やってリレーも活躍してたし、皆からひっぱりだこだろうなあって思ってたから」

しんじ「それでも」

ゆうか「私は大丈夫だから。それよりもめんどくさいよね…。だから他の女の子と仲良くしてもいいよ。私が嫌になったならあの子と…しんじ「それマジで言ってる?」」


私は何も言えず俯く。


しんじ「マジで言ってたら怒るよ?」

ゆうか「でも…」

しんじ「俺が好きなのはお前だから」

ゆうか「だったらなんで女の子にべったりされてても避けないのよ!なおとくんはちゃんと距離間とか気にしてあかりのこといつも大切に思ってるのに。全然わかんない。噂も否定すればよかっ…!」

しんじ「あれ、ほんとだから」

ゆうか「え」

しんじ「俺、お前のこと1年の頃からずっと好きだったから」


そう言うとしんじは少し上を向き話を続ける。


しんじ「1年の入学式さ、中学一緒だったなおと達と違うクラスで正直つまらねぇと思って教室入ったのよ。そしたらやけに明るい女子がいてあっという間に友達作ってわいわいやってるの。その笑顔みてさ、俺にその笑顔向けてくれたらどんなにいいかって思ったんだよ」


しんじは私の方を見る。


しんじ「お前のその笑顔に惚れたんだわ。お前の方ばっか俺みてたからなー。自然に噂たったんだろーよ。だから噂はほんと。否定する必要も無いだろ?」

ゆうか「うん」

しんじ「ま、お前はそんな噂知らなかっただろうけどな。だから、んな事言わないでくれ」

ゆうか「うん、ごめん。気持ち考えてなかった」


私が俯きながら謝ると頭をくしゃくしゃされ、抱きしめられる。


しんじ「俺もお前の気持ち分かってなかった。ゆうか、こっち向いて?」


私は俯いていた顔を上げるとしんじの唇が重ねられる。

初めてのキスだった。


ゆうか「な、な、何するの…」


語尾が弱くなる。

恥ずかしくてまた俯く。


しんじ「お前ほんと可愛いな!」

ゆうか「な、な」

しんじ「ちゃんと他の奴らには、お前と付き合ってること言ったから安心しろ!」

ゆうか「ほんとに?」

しんじ「おう!だからもう泣くなよ」

ゆうか「うん!」


私が頷くと彼はまたぎゅっと今度はさっきよりも力強く抱きしめられる。




なおと「しんじ達大丈夫かな」


帰り道、なおとくんが呟く。

なおとくんのことだからゆうかのことは察していたのだろう。


あかり「大丈夫だよ。だってしんじくんすごくかっこよかったもん。ゆうかにも見せたかったなー」


ゆうかが飛び出した後のことだ。




しんじ「ごめん、俺も帰るわ」

男子1「え、おい…」


しんじくんが鞄を持ち帰ろうとするのをしんじくんの隣に座ってた女の子が阻止する。


女子1「待ってよ」

しんじ「悪いけど、俺、あいつと付き合ってるから」

女子1「でも…」

しんじ「俺が好きなのはあいつだけだから、じゃあ」


そう言うとしんじくんは走って部屋を出て行った。

打ち上げはそのまま解散となった。




あかり「でも、しんじくんも鈍感だよねー。ま、そこがしんじくんぽいというかね」


笑いながらなおとくんをみると少し不機嫌だ。


なおと「僕の前でしんじのことかっこいいっていうあかりも鈍感だよ」

あかり「あ、ごめんなさい」


そっと私の手をなおとくんが握る。


なおと「仕方ないから許す!」

あかり「ふふ、ありがとう!なおとくん!」


私はなおとくんの手を握り返す。

幸せを噛み締めながら。

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恋をやめた私と、私に恋する君。 ゆん @yunyun22

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