第22話 勝者は…
いよいよ最後の種目のリレーが始まる。
私は応援席でなおとくんを応援することにした。
しんじくんもリレーに出場しているため、ゆうかも隣に一緒にいる。
放送「最後の種目、3年生によるリレーです」
放送と共に音楽流れ出場選手が入場してくる。
そこにはしっかりなおとくんとしんじくんもいる。
ゆうか「な、なんかドキドキする…」
ゆうかを胸に手をあててしんじくんを見ていた。
目線に気づいたのかしんじくんはゆうかの方をみて笑顔でピースをした。
それを見たゆうかもピースしていた。
「この2人もいい感じだなぁ」と思っていると、私は1人の視線に気づく。
なおとくんだ。
声は聞こえないが口を動かしている。
「み・て・て・ね」
私は笑って頷く。
そしてなおとくんも頷くと始まりの合図が響く。
2組のトップバッターはしんじくんだ。
そしてアンカーがなおとくん。
なおとくんの隣には1組のアンカーの島谷くんがいる。
(もし…島谷くんが勝ったら、私…)
そんな想像をして首を振る。
(大丈夫!なおとくんを信じよう!)
私はそう自分に言い聞かせリレーを見守る。
放送「1組と2組ほぼ同じタイミングでアンカーにバトンが渡されました」
リレーもあっという間に終盤だ。
最初のしんじくんがかなり他のクラスより離してくれたが、1組の走者にかずきくんがいたため少しずつ距離が迫りアンカーに渡される頃にはほぼ距離がない状態だ。
ゆうか「ギリギリなおとくんがリードしてる…?」
私、祈ってた。
(お願い…なおとくん…!)
ゆうか「あ、でも島谷くんが前にでてきた」
それを聞いた途端つい私の体が動く。
あかり「なおとくん頑張って!!」
私は立って大声で叫んでた。
周りの声援もあったのでそんなに恥ずかしくはなかったが、隣にいたゆうかは驚いていた。
そしてなおとくんはーーー
かずき「よ!しんじおつかれー!」
しんじ「おつかれ!いやー、俺が最初飛ばしたのに途中のお前のおかげでラスト大接戦よ!」
かずき「へへ、まあ彼女みてるからかっこいいところみせねーとなー」
しんじ「よく言うわ」
かずき「てか、あれ?なおとは?」
しんじ「あー、まああいつ頑張ったからなぁ」
私はリレーが終わるとすぐに応援席から飛び出した。
閉会式まではまだ時間がある。
(早くなおとくんに会いたい)
リレーの結果は、なおとくんがラストに追い上げ2組が1位だった。
その姿をみて私はすぐにでも彼に会って抱きしめたいと思ってしまった。
しんじ「あれ、白井?」
あかり「しんじくん!」
しんじ「なおとなら多分校舎裏」
あかり「え」
しんじ「早く言ってやれ」
あかり「ありがとう!」
私はしんじくんにお礼を言い駆け出す。
なおとくんに早く会うために。
なおと「やっば、汗すごいな」
あの時の自分は全力だった。
今まであんなに早く走れたことがあるのかというぐらいには早かったと思う。
あかりに早く会いたいけどこんな汗びっしょりではかっこもつかないので、校舎裏の日陰で少し休んでから向かうことにした。
「なおとくん!」
聞きなれた声が聞こえそちらの方向を向くとあかりがいた。
走ってきたのか息を切らしながらこちらに向かってまた走ってくる。
なおと「あかり!?え、どうして?」
あかり「はぁ…はぁ…だって…なおとくんに…早く会いたくて…」
僕は驚きのあまり何も言えなかった。
あかり「なおとくん、おめでとう」
そう言うとあかりは僕のことを抱きしめてくれた。
慣れていないので心音が早くなる。
あかり「なおとくんかっこよかったよ!私のために走ってくれてるのかなって思っちゃうぐらいに」
なおと「あかりのためだよ!」
つい食い気味で言う。
けど、間違えではない。
なおと「あかりのために島谷くんには負ける訳にはいかなかったし。それに…」
あかり「それに…?」
あかりはその続きを待っている。
すごく恥ずかしいけど今日は体育祭で、今はあかりが抱きしめてくれてる。
こんなに幸せなら言っていいだろう。
なおと「それに、僕はあかりのことこれまでもこれからも誰にも渡す気はないから」
あかり「え」
なおと「高校生が何言ってるんだって感じだけどね」
最後は照れながら少し目を逸らしてしまった。
あかりは固まってしまったのか何も言ってこない。
(ちょっと独占欲強すぎかな…)
少し不安にあかりを見ると塞がれた。
初めてあかりからキスをしてくれた。
そしてゆっくりと、唇が離れていく。
僕もあかりも真っ赤だ。
あかりは俯きながら僕の肩によりかかる。
あかり「なおとくん、反則だよ…」
なんていい顔をあげる。
ちょうど僕からは上目遣いだ。
目がうるうるしておまけに真っ赤。
今度は僕からあかりの口を塞いだ。
閉会式が始まる。
結果、私達2組は1位で優勝だった。
皆飛ぶように喜んでいた。
閉会式が終わり片付けが始まる。
私は実行委員があるため皆より少し残らなければならない。
クラスの皆は打ち上げムード。
しんじくんは団長ということもあり男子達に連れて行かれた。なおとくんもリレーのこともあり、一緒に連れて行かれてた。
待てないことを気にしたのかなおとくんは「ごめん!」と手を合わせできたが、私は「気にしないで」と送り出した。
「白井さん」
本部のテントを片付け終わると声をかけられた。
島谷くんだった。
あかり「島谷くん」
島谷「リレー、負けちゃった。田村あんなに早いとは思わなかったわ」
あかり「私も。ちょっとびっくりしちゃった」
島谷「え?」
あかり「彼があんなに一生懸命私のために走ってくれると思わなくて…。あ、彼の気持ちの強さは分かってるけどね!なんか彼でよかったって」
島谷「そっか」
あかり「ごめんね、だから気持ちには応えられないです」
島谷「わかった。じゃ、片付けはもういいから早く行きなよ!体育祭大活躍は間違えなくあいつでしょ?打ち上げで他の女子に取られる前にちゃんと隣にいな!」
あかり「ありがとう。島谷くんの気持ち私、嬉しかったよ。じゃあお疲れ様!またね!」
私は走って教室に戻り鞄を取る。
大好きな彼のもとへ、彼の隣へ行くために。
私が打ち上げ会場であるカラオケに着くと、ゆうかが1人で端っこでジュースを飲んでいたので隣に座る。
あかり「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
ゆうか「いいよ、お疲れ様!」
何か拗ねてるような気がするのは気のせいかと思ったが、相変わらず顔に出るのでわかりやすい。大体予想はつくが…。
あかり「何拗ねてるの?こんな端っこ座って」
ゆうか「あれみて」
ゆうかが指す方向を見るとしんじくんが一部の男子と一緒にどんちゃん騒いでいた。
そして、男子達に混ざるように私達とあまり話した事ない女子、数人もいる。
その中の1人が最初からずっとしんじくんの隣を独占してるそうだ。
(なるほどね…これは拗ねるよね…)
ふと、なおとくんを探すとなおとくんも何人かの女子と話してはいるがほぼ男子と一緒に話している。
私の視線に気づくと彼は周りとの話を中断し、私の方へ向かってくる。
なおと「片付けおつかれ!ごめんね、待っててあげられなくて」
あかり「いやいや、大丈夫だよ!それより…」
私は隣に座り拗ねているゆうかをみる。
なおと「あぁ…一応しんじにも安川さんのこと気にしてあげてねって声はかけたんだけど…」
あかり「そっか…。ゆうか、嫌だったら一緒に帰る?」
なおと「僕もそろそろって思ってたし、しんじ呼んで4人で帰って…ゆうか「大丈夫」」
ゆうかはなおとくんの言葉を遮るように返事はしたが、浮かない顔はそのままだ。
何とかしないと思いしんじくんを見るがこちらの様子には気づいていない。
男子1「そういえばしんじって付き合ってるやつとかいんの?」
ゆうかの肩がピクっと動く。
女子1「あー、私もそれ聞きたいな!てか、1年の頃噂なかった?」
男子2「あった!あった!」
しんじくんの隣に座ってる女子もその話にのる。
しんじ「は?なんだよ急に」
男子1「はがらかすなよー!ほらほら、1年の頃、しんじはある女子が好きーって」
女子1「そうそう!その女子って確か安川さんじゃなかった?」
ゆうかの肩がまたピクっと動く。
俯いているからゆうかの表情までは分からないが、あまりここに長居するのは良くないと思いゆうかに声をかける。
あかり「ゆうか帰ろ?ね?」
でも、ゆうかは俯いたままで動かない。
なおとくんも心配そうにゆうかをみている。
しんじくんを見ると黙ったままただジュースを飲んでいた。
男子1「え?まじまじ??」
女子1「そんなわけないでしょー!」
噂を否定したのはしんじくんの隣に座ってた女子だった。
女子1「だってあんまり2人とも話してるところ見たこと無かったしー。あ、ねぇねぇしんじくん今付き合ってる子いないなら私と付き合お!」
バタン
ゆうかが立ちあがる。
ゆうか「あ、私…今日買い物頼まれてるからもう帰るね!」
そう言うとゆうかは部屋を出てしまった。
明るい声だが空元気だった。
表情も見る人ならわかる。今にも泣き出しそうな顔。
それをしんじくんが気づかない訳が無いと思いしんじくんをみる。
目を開き驚いていた。
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