第21話 体育祭

ゆうか「おまたせ!」


今日は高校最後の体育祭。

せっかくなので1組のメンバーもあわせて8人で登校しようということで、駅に待ち合わせした。待ち合わせ時刻1時間前に私入れて女子4人は私の家で髪型をセットしてた。言い出したのはつばさだった。


つばさ「せっかくの高校最後の体育祭だし、4人でなにか揃えない?」

ゆうか「お!いいね!何揃える?」

つばさ「ハンカチとかタオル?」

ひなこ「髪型とかは?」

つばさ&ゆうか「いいね!」

ひなこ「あかりちゃんは?」

あかり「私も賛成!」


男子には秘密でそれぞれネットや雑誌などでやりたい髪型を調べてきて、気に入った髪型をすることにした。

それぞれのクラスの色のリボンがついた髪留めもし、みんなとても可愛かった。

いざ、男子の前に立つと緊張した。ゆうかはつばさと私の後ろにちょうど隠れ姿をみえないようにしていた。


つばさ「どうかな?皆で揃えてみたの!」

かずき「めっちゃ可愛いじゃん!いいと思う!」


さすがかずきくん!モテる理由がわかる。

チラッとひーちゃんのほうをみると、たくみくんといい感じに話していた。これでまだ付き合ってないらしい。「早くくっつけ!」とここにいる誰しも思ってることだ。


なおと「あ、えっと…」


なおとくんに視線を向けると少し動揺していた。私は頭の上に大きいはてなを浮かべるように、首を斜めにむけた。


しんじ「ぷっ、なおと照れんなよ。なんか言ってやれって」

なおと「え、あ…。その…可愛いです…」


なおとくんの顔が徐々に赤くなっていくと同時に、私も照れてきてしまう。


あかり「ありがとうございます…」


私達をみて他のメンバーはにやにやしていた。ただ1人を除いて。

元気よく「おまたせ!」と言ったのが嘘みたいに私とつばさの後ろからいまだにゆうかがでてこない。しんじくんをみつけた途端すぐに後ろに隠れてしまったのだ。


しんじ「で、そろそろでてきてくれねーか?」

つばさ「ほら、ゆうかせっかくの可愛い姿、彼氏にみせなきゃだよ!」

ひなこ「そうだよ!ゆうかちゃんが一番似合ってる髪型なんだから!」

ゆうか「やだ!絶対やだ!」

あかり「このままじゃ学校行けないよ?」

ゆうか「うーん、やだ!」


恥ずかしがってるゆうかは可愛いけど、頑固な面が全面にでるので少しめんどうだ。


しんじ「お前ら、少し先歩いてて。すぐ追いつけるようにするから」

かずき「わかった。じゃあいくぞ」


ゆうかは私とつばさの体操着をぎゅっと掴んでるが、私達はそっと後ろを振り返ると離してくれた。


あかり「いっぱい褒められなね!」

つばさ「可愛いぞ!ゆうか!」

ひなこ「ごゆっくりね!」


それだけゆうかに残し、私達は男子達の後についていく。




しんじ「まあなんて言うか、可愛いんじゃね?」

ゆうか「え?」


数秒の沈黙から突然口を開いたのはしんじだった。何を言い出すかと思えば、突然褒めてきたので私の顔が熱くなる。


(いつもは可愛いとかそんなこと言わないのに…)


顔が赤いことを隠すように私は後ろを向く。


しんじ「なんでそっち向くんだよ。せっかく可愛いって言ってやってるのに」

ゆうか「な、なによ!せっかくって!!」


そう言うと同時にまたしんじのほうへ振り向くと、しんじも少しだけ顔が赤い気がした。


ゆうか「あれ?」

しんじ「な、なんだよ」

ゆうか「照れてる?」

しんじ「照れてねーよ」

ゆうか「でも、顔赤いよ?」

しんじ「うるせー!」

ゆうか「ふふ、ありがとう!」


私はニコって笑うと今度はわかりやすく赤くなったので思わず吹いてしまいそうになる。


ゆうか「さあ、早くあかり達に追いつかないと!」

しんじ「おう」




学校へ着くと、私は委員会の仕事があるので皆とは離れ集合場所の本部テントへ向かった。

着くと立花さんと島谷くんがいた。


立花さん「おはようございます、白井さん」

あかり「おはよう」


気まずくて、なんとなく目を合わせられない。


島谷「白井さん」

あかり「あ、島谷くんおはよう。私もしかして時間間違えちゃった?」

島谷「ううん、僕達が早すぎたんだ」

あかり「そっか」


今のこの空間はとても居づらい。立花さんは全然普通に話しかけてくるしどうしていいかわからない。誰でもいいから早く来て欲しい。


立花さん「あ、私ちょっとお手洗い行かせてもらうわね」

島谷「あと5分ぐらいだから早く帰ってこいよ」

立花さん「はーい」


そして島谷くんと私という2人だけの空間になった。あと5分で集合場所になると言うのになんで誰も来ないのか。


島谷「白井さん」

あかり「え、なに?」


突然話しかけられたので、とても驚いた。

そして、驚いたのはそれだけじゃなかった。島谷くんが私の手を握ってきた。


あかり「え」

島谷「今日の俺のでる種目にリレーがあるんだ」

あかり「そ、そうなんだ」

島谷「確か田村もだったよね?」

あかり「え、うん。どうしてそれを」

島谷「これ」


島谷くんは私に競技にでる生徒名簿をみせた。実行委員長だから流石にもってないとおかしいよなと考えてると島谷くんの手にぎゅっと力が入る。


島谷「俺が一緒に走る人の名前見て」


リレーの走者名簿をよくみて、島谷くんの名前をみつけた。そしてその隣には


あかり(なおとくんの名前…)


島谷「俺が勝ったら、白井さん俺と付き合って」

あかり「え」

島谷「悪いけど、本気だからね」

あかり「ちょ、ちょっとまって」

立花さん「あら、白井さんどうしたの?」


私は急いで島谷くんの手をはらいのける。


あかり「なんでもないよ」

立花さん「そう、あ、やっときたわ。ギリギリよ!」


立花さんが来てくれたおかげで、ちょっと落ち着いた。そのまま島谷くんは今日の流れなどを説明し、私は副実行委員なのでほとんど島谷くんの補佐になる。と言っても、体育祭本番は島谷くんが種目に出てる時だけここ本部テントにくるだけであとは応援席にいるだけなのであまり仕事はない。

開会式があるため、島谷くんを残し私たちは応援席へ戻る。ふと、前方をみると立花さんがいた。なんとなく気にしていたことがあるので話しかけた。


あかり「立花さん」

立花さん「なにかしら?」

あかり「あの、関わる気ないって言ったけど…友達になりませんか…?」

立花さん「え」


あの時のことは許せなくて、いっぱい泣いたしいっぱい傷ついた。でも、立花さんと関わらないのはなんでか嫌だなという気持ちがあとから出てきた。


あかり「お願いします」


私は立花さんの前に手をだす。


立花さん「はい、こちらこそよろしくお願いします」

あかり「うん!」


2人で笑顔で握手をしてると、誰かが私を呼ぶ声がした。振り返るとなおとくんがいた。


なおと「もう出席とるって」

あかり「そっか、じゃあ立花さん今日は楽しもうね!」

立花さん「はい」


立花さんに手を振って立ち去ろうとした時だ、「そういえば」と立花さんが口を開いた。


立花さん「白井さん、りょうに手を握られてたけどどうしたの?」

あかり「ちょ、立花さん!?」


私は驚いてあわてて立花さんの口を塞いだ。

そして後ろから視線を感じ、振り返るとなおとくんが怖い顔をしていた。


なおと「あかり、どういうこと?」

あかり「いや、えっとその説明するとあの…」

立花さん「りょうは白井さんのこと好きなの。告白でもしたんじゃない?」

あかり「はい」


立花さんはどうやら一部始終をみてたらしい。ということは立花さんは私が困っていたのを助けてくれたんだ。


立花さん「まあ体育祭中はりょうのこと注意した方がいいわよ、じゃあね」


立花さんはなぜかとても楽しそうな笑顔で行ってしまった。ほんの少しだけど、彼女の優しさに触れた気がする。

気がつくとなおとくんが私の手を握っていた。


あかり「わぁ!?」


私が驚いて払おうとしてもなおとくんの手は私の手をぎゅっと握って離さない。


なおと「今日は僕の目の届くところにいてね」

あかり「え」

なおと「できるだけね!無理な時もあると思うけど、島谷くんと2人にはさせたくないから」


わかりやすい独占欲に私は顔を赤らめる。

なおとくんも私の顔をみて、すぐ私と同じように真っ赤になるが手は離さず、歩き出した。


あかり(やばいな…)




体育祭も開会式が終わり、種目にうつる。

私は障害物競走にでて、1位を取った。一緒にでてたゆうかはつばさに負けて2位で悔しがっていた。

応援合戦では私達3年生がメインで、組のカラーのオレンジが大々的に入った衣装だった。女子がチアガールで男子が学ラン。団長のしんじくんはかっこよく決まっていて、ゆうかは顔を真っ赤にして「やばい!」と連呼していた。逆に私達はと言うと、なおとくんが私のチア衣装をみて顔を赤らめていて思わず笑ってしまった。

そして、1番最後の3年生によるリレーの2つ前の競技中、お手洗いをすまし、応援席へ帰る途中「白井さん」と呼ばれたので振り返ると島谷くんがいた。なんとかして早く戻らなきゃと思っていたが、腕を掴まれる。


島谷「朝、話したこと覚えてる?」

あかり「あ、うん…」

島谷「本気で考えてもらえると嬉しいんだけど」


どうしようと動揺しているとふと、私の腕から島谷くんの手が離される。いや、離されたのだ。なおとくんに。


あかり「なおとくん!?」

なおと「ごめん、島谷くん。僕の彼女に触るのはやめてくれないかな?」


今までに見たことないようななおとくんの表情に私は驚く。そしてなおとくんが私を引き寄せたので、ちょうど抱きしめられてるようなそんな形になっていたため顔が熱くなる。


島谷「悪いね、田村くん。僕は行くよ。白井さん、ちゃんとみててね」


島谷くんは余裕の笑顔で去っていった。

「はぁー」っと思いっきりため息をついて、腰が抜けそうになるのをしっかりなおとくんに支えられる。


あかり「あ、ごめんね」

なおと「大丈夫?」

あかり「うん!でも、ちょっといつまでもこの形は恥ずかしいかも…」


なおとくんは気づいてなかったのか、今の状態をみると顔を赤くしすぐさま離れる。


なおと「ごめん!」

あかり「大丈夫。それよりもありがとう!」


私は笑顔でお礼を言うと、なおとくんは私の両手を握る。


なおと「必ず勝つから。任せて!」


なおとくんの決意の表情。心の中でかっこいい呟きながら私はなおとくんの目をしっかりみる。


あかり「頑張って!」

なおと「うん、絶対渡さないから!じゃあ行ってくるね」


なおとくんは走っていった。

その後ろ姿はかっこよくて、逞しくて、正義のヒーローのようなそんな気がした。

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