関係性の構築がとても上手い。
主役二人の目指す理想的な生き方には二人ともに共感できる。主役理論も脇役哲学も生きていて楽しいと思う瞬間を突き詰めただけなのだから、それが極端というだけで、理解も共感も簡単だった。
わかりやすい。
互いの理解度が高く、というかほとんど同じ二人が、ほんの少しだけ目指す方向が違う、その絶妙なバランス感が凄く興味深い。なぜ違うのか、どう違ってくるのか。二人の過去と、進む先とへの興味が、単純にストーリーを楽しみにさせてくれる。
わくわくする。
そしてときたま入る周囲の視点が、そのおかしさに気付かせてニヤニヤさせてくれる。二人は互いに互いの理解が深すぎる。はたから見たらいちゃついているようにしか思えない。まるで夫婦だ。特にサブヒロインの、当たり前に当たり前な感想が非常に面白い。読んでる側は二人の生き方を分かっているけれど、そりゃ普通に見たらそうなるよね分かる分かるよがんばって、という気持ちになるのもまたコミカルだ。
おもしろい。
取り巻くキャラクター達にも、布石や火種の気配を感じる。彼らは舞台装置めいているけれど、その丁寧に仕込まれていく舞台がどんな形になるのかは気になる。主役二人にも生き方のこだわりが強くあるからか、青春としても熱いし、それを彩るものになるのだろうと楽しみになる。
これは良い青春ラブコメだ。
気になるのはサブヒロインだ。彼女はかわいい。がんばってと応援したくなる。だけど考えてしまう。彼女はおそらくサブヒロインだ。あまりにもサブヒロインめいている。そしてここに青春ラブコメの必定、避けられぬ法則の一つをあえて明記しようと思う。サブヒロインは報われない、という法則がこういうラブコメには存在する。特にこのサブヒロインちゃんは元々が報われない性質だ。なんということだろう、深く考えれば考えるほどここに業の深い構造が垣間見えている。深淵だ。深淵がある。こんなにも健気で幸薄そうで溌剌としたサブヒロインちゃんは運命に見放されているのだろうか。連綿とこのジャンルに受け継がれてきた宿命がサブヒロインちゃんを雁字搦めに縛り上げている。進むストーリーのその先にサブヒロインちゃんの涙なき笑顔は待っているのだろうか。想像してみる。泣きながら笑っている姿が想像できてしまう。そういう構造の気配を感じないだろうか。サブヒロインちゃんは大丈夫だろうか。そこに救いはあるだろうか。いや救いなき状況にもこのサブヒロインちゃんは、彼女ならば、救いを見出すだろうと思う。それは確かだ。だから悲しみに打ちひしがれている姿は想像できない。それは救いだ。救いだろう。しかしそれは報われていると言えるのか。不幸に包まれた彼女に幸せは訪れるのだろうか。
だからそう、ただ祈りたいとおもう。サブヒロインちゃんに幸あれと。