(あとがき)

 橙子は、木戸の机の上に「休暇願」を出した。


 ——君っー、特命捜査員になんてあるはずないだろ! 毎日が有給だろ!、君らは


 ——課長、私も一応準キャリで入って来た公務員です、権利は主張させてもらいます。では、あとは、ヨロシクー


 橙子は、後ろ手に手をひらひら振って、木戸の前から消えて行った。


 ——————


 橙子は、バンコク「スワンナプーム空港」経由で「プーケット」に降り立った。何年ぶりのタイだろうか……、四月のタイは一年でも一番暑い時期である。

 照りつける南国の太陽をサングラス越しに見上げると、広げた手の指の隙間から真っ青な空と一緒に橙子を迎えてくれた。


 ピピ島に向かう船の上で、ロング缶のビールを呷り胸いっぱいに南国の海の風を吸い込むと、ビキニの胸の盛り上がりが一層際立って、陽気なタイ人船長が口笛ひとつ鳴らして寄越した。


 一面真っ白な砂浜に、二つのデッキチェアを挟んで派手なビーチパラソルが海風にたなびいている。




 ——来たよーっ


 健人はサングラス越しにビキニ姿の橙子を捉えると


 ——やっと、来か。で、今夜こそらしてくれるんだろ?


 橙子は、冷たく冷えた缶ビールを健人の頬に当て耳元で囁いた。



 そのために、来たんだし——。


 エメラルドグリーンの海に白い波が弾けて、しょっぱい潮風が二人が合わせた唇の隙間を吹き抜けていった。


                        【 完 】



 -----------------------------------------


 長きに渡り、ご購読頂いた読者様に、ここでひとまず感謝申し上げる。

 また、いつか、続編を書きたいと思いつつ、無事、脱稿できましたことに

 皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

                        千葉 七星

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【企業舎弟の遥かな野望】 千葉七星 @7stars

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