なぜヒーローはヒロインを助けるのか?
@reitaro
卒論に使おうと思っていたネタを思い付きで書きます
こんななぞなぞをご存知でしょうか。
ある父子が交通事故に遭って大けがをし、二人は病院に搬送されました。手術を担当した外科医はこう言いました。「この子の親は私です」
さて、どういうことでしょう。
正解は、外科医は子の母親である、ということでした。答えを知ってるとすぐわかっちゃうんですが、どうも混乱してしまいますよね。
某無免許医の漫画の影響か、外科医は男がやるものと考えがちです。かく言う私もこの問題を出されたときは回答に困ったものです。このように、外科医は男の仕事だろ、保育士は女の仕事だろ、って「なんとなく」「前からそうだったから」とかなんとかいう理由で社会的に性に区別をつけることを「ジェンダー」といいます。最近も問題になりましたね。だいたいこんな感じです。ちなみに対義語は「身体の性差」であり、「セックス」です。
長々と堅苦しいことをしゃべってしまいました。私の大学のゼミでは、よくジェンダー問題を扱っていてこういうことを考えるのが多いのですが、今日思いついたことがあったので、忘れる前に書き溜めておこうとおもった次第です。論っていうか考察っていうかブログレベルなので体裁も何もあったもんじゃありません。
サブカルジェンダーを考える上で、まずはセーラームーンをサンプルとして議論していきたいと思います。私は昔セーラームーン何回か見たんですけど、お助けキャラのタキシード仮面出てくんのめっちゃ遅くてあんま強くないっていうかスーパーパワー持ってないんですね。超かっこよくないですかタキシード仮面。
閑話休題。
セーラームーンに変身する月野うさぎは千場衛という青年に淡い恋心を抱いています。実は衛がタキシード仮面でさらに二人は前世で結ばれていたという衝撃の事実が明らかになるのですが、その辺は作品見てください。ネタバレブッ込んどいてなんですが。
で、何が言いたいかっていうと、「家を守ってろ」って言われた女が前に出て敵と戦う。そういう意味では魔法少女ものっていうのは革新的なものでした。それでも、主人公のゴールはかっこいい男性と結ばれることでした。魔法少女ものを論じるなら魔法使いサリーから観ろって言われそうですけど許してください。
一方、男の子が子供の頃見るものとしてスーパー戦隊や仮面ライダーを考えてみましょう。これらの作品のヒロインは、主人公と結ばれるどころか、いい感じになる作品はほんと少ないです。一部はそういうのありますけど。主人公の目的はあくまで悪の組織を潰すことで、色恋沙汰は二の次です。色恋のいの字もない作品も珍しくありません。ただ、律儀にというか、英雄は女を助けるというかそういうことはしっかりします。ヒロインがヒーローに戦いの景品として手に入れられるみたいなお決まりのパターン。
男は女を助け、女は結婚するもんでしょ? っていう風潮が反映されてると思うんです。そういう意味では男衆と肩を並べて戦う女性隊員って当時からすれば斬新だったと思うんです。ただ華を添えるためっていう理由が大部分だったとは思いますが。
また脇道にそれるんですが、セーラーサターンってすごく良くないですか? 一番心優しい娘が一番ヤバい力持ってるとか、当時の製作者は時代のさらに先をいってたとしか思えません。
さて、時代は流れます。かなり。具体的に言えば「まどマギ」の頃まで。
まどマギの主人公、鹿目まどかの父親は主夫で、母親は仕事をしています。お父さんの知久さんは穏やかで温厚な人です。代わりに、まどかに助言をしてあげたり危うい道に入りそうなまどかを引き留めるなど、「父親的」な役割を果たすのはお母さんの詢子さん。いいですよねこの二人。惚れたのはどっちが先なんでしょうね。
そして、主人公は色恋沙汰とは縁がありません。そんなことにかまけてるレベルじゃないんです。その代わりに恋愛をこじらせて犠牲になるのが……。
とにかく、「まどマギ」で描かれた人物関係は、ステレオタイプの、前時代的なジェンダーではなく、そのころになってようやく受け入れられ始めた性的多様性を反映した作品ではないかと思うのです。
ただ、まどマギはどっちかというと男性向け作品。女の子向けの魔法少女ものといえば、この時期は「プリキュア」でしょう。
ただ、プリキュアにおいても描かれるのは主に同性同士の絆であり、ボーイミーツガールもとい、ガールミーツボーイ成分は薄い印象。男女の恋愛が大きな軸となった作品もあるようですが。
さて、最後は「ホモソーシャル化するアニメ」について考えていきたいと思います。ホモソーシャルっていうのは、同性間で構成する社会というか空間のことです。社会とはいっても「リングは男の舞台だぜ、女子供は入ってくんな」とかそういう感じ。バスケ部が男子女子で分かれてるとかそういう感じ。
「ごちうさ」とか「Free!」みたいな作品のことです。作品の根幹をなす人物がみんな一つの性になってると思うんです。こうした作品を盛り上げた要素の一つとして二次創作、さらに突っ込めば「百合」と「BL」の要素があったはずです。こうなってくると、もはやジェンダーとか何それ?の域です。これらの作品内における恋愛は結婚に結びつくような重いものではなく、良くも悪くもファッション的な軽いものに落ち着いたと思います。
最後に、私を百合厨にした作品を紹介して終わりにしたいと思います。最近のアニメなので一応ネタバレ注意です。「Lostorage incited wixoss」という作品です。概要をざっと説明すると、少年少女が記憶をかけた「セレクターバトル」という戦いに巻き込まれ、負け続けるとプレイヤーの人格が消滅するという過酷なルールの中、主人公穂村すずこが、小さい頃離れ離れになった親友、森川千夏と過ごした記憶を守るために戦うという感じです。
「昔別れた友達の記憶のために戦うとか重くね」とか思われる方が多いと思うんです。実際重いです、すず子。ただ、森川千夏という女には勝てません。重さで。幼少期のすず子は大人しい子で、千夏に引っ張られて、千夏の背中を追いかけて過ごしてきました。千夏も、すず子の憧れの存在でい続けようと、頑張ります。離れ離れになってからも。ええ。重いでしょう? 物語は、すず子が千夏と再会して動き出します。
すず子がいなくなっても頑張り続けた千夏。しかし、彼女に不幸が舞い込みます。父親の会社が倒産。自分が夜の街を歩いていることを教師に吹き込まれ注意を受けます。そのことで逆上し、教師に吹き込んだ(疑惑)の少女に手を上げます。そしてその暴力沙汰がバイト先の店長の耳に入ってバイトをクビになる。不幸のドミノ倒しです。
すっかり疲労困憊の千夏。そんな彼女が、セレクターに選ばれます。セレクターバトル、記憶をかけた戦いで勝ち抜いた暁には、記憶を好きにできるという特典があるのです。彼女は穂村すず子の記憶を消すことを選びます。離れてもなお、自分を縛り続けたすず子。彼女を捨てることで、楽になりたい、本当の自分になりたいと望むようになります。そして再会を喜ぶすず子を敵視し、平時の彼女では考えられない罵詈雑言を放ちます。
しかし、千夏が本当に憎んでいたのはすず子ではなく、すず子に依存しきっていた自分自身だったということが判明します。今では優等生、完璧超人を装うことに成功している千夏ですが、小さい頃は内気な性格でした。彼女とすず子のなれそめは、幼稚園で友達の輪に入らず一人で遊んでいた千夏に、すず子が声をかけたことでした。それ以来千夏はすず子に依存することになります。具体的には、すず子が他の友達と話しているところを見計らい、あえて声をかけるなど、すず子に「自分だけを見て」というメッセージを放ち続けます。そんな自分が心底忌々しかったのです。黒歴史ですね。
すず子と千夏の因縁の対決。その最中に、千夏はその心の内を吐き出します。そして、すず子に敗れることになるのです。それ以降は、今までの覇気はどうしたってレベルのヒロイン化です。戦いを軸としたアニメで、主人公に執念を燃やすライバルがヒロインに堕ちることは結構珍しいのではないでしょうか。
ここで、幼少期からLostorage最終回までの二人の関係性を見ていくと、「引っ張っていく」、ヒロイックな役割がすず子→千夏→すず子、と二回変わっていってるんですね。ヒーロー役、ヒロイン役を分けるのはもはや性別ではなく、性格や立場っていうことなんでしょう。
私自身、男女が出会って結婚して子供をつくるのが当たり前だ、とかいう風潮は〇ねばいいと思っています。そして女の子同士がイチャイチャしてるのを見るのは大好きです。ですから、多種多様な恋愛、または誰も愛さないという恋愛のありかたが増えるのは好ましいです。二次三次問わず。こうしたキャラクター間の恋愛を考える、あるいは描く時に、「この二人は(あるいは複数人間)、どのような過程でどのように恋をしたのだろう?」とか、至極当たり前のことなんですけど、そういうことを考えて描くと、キャラクターに深みが出てとても美味しい。と思います。
上手いまとめが思いつかないので何か思いついた、思い出したら追記しようと思います。皆様が引き続き充実した妄想、創作ライフを送られることをお祈りして、まとめとさせていただきます。ここまで読んで下さってありがとうございました。ここ間違ってるわ! ってのありましたら、是非教えていただけると幸いです。
なぜヒーローはヒロインを助けるのか? @reitaro
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