解説:第六夜 今日も雨
煙霞【えんか】
…煙のようにたちこめた靄のこと。また、そのような靄のかかった景色のこと。
空船の『煙霞の空船』というフルネーム(?)わりと気に入ってます。
黄泉を進む船のイメージ。
BGM:今日も雨
『雨』は作中、重要なキーワードです。人魚が泣くから雨が降る。
夜の雲児は雨が好きです。昼の雲児も、実は嫌いじゃあありません。雨の情緒を味わうことができるのは、日本人の特権であり習慣のような気がします。
♪知らないほうがましだったことは たくさんあるけれど
♪読みかけた本に印をつけて 閉ざした本に寝そべります
♪悔しいけれど いらない過去で この私は作られてます
玖三帆のキャラクターが決まったのは、ここの歌詞でした。
前話で言った通り、『楯』と『今日も雨』は、倉橋ヨエコさん繋がりで玖三帆と克巳のイメージなのですが、『楯』に比べ、『今日も雨』はわりと前向きな楽曲です。
この、ぐちぐちネガティブを垂れるくせに『そんなもんだろう』と語尾にくっつけて寝そべるような感じがとても玖三帆です。
空船と雲児の決別:
雲児は空船をやんわりと拒絶し、決別します。
空船は、ただただ片割れの喪失に体を丸めて苦悩します。
赤くライトで照らされるトンネル内、狭いシートで丸まる空船は、胎児のイメージ。
関係ないですが、『孕み人魚』を書くために手を伸ばしたドグラマグラで、陸一は夢野久作作品にはまりました。後半に行くに従い、久作作品の影響が出てきます。
夕日の記憶:
第一夜解説で『解釈の違いもテーマの一つ』と言いましたが、ここでも空船と雲児の夕日を見た感想が対比されます。
空船が『血のようだ』と不吉さに慄くのに反し、雲児は『鬼灯みたい』とうっとり言う。
雲児には性別がありませんから、空船が雲児に対して抱いている情の形が何であれ、何ら問題となるものはありませんが、この二人は互いに(情が深すぎるという意味で)コンプレックスが極まっています。
空船にある玖三帆の記憶:
玖三帆=空船というミスリード。
克巳の記憶を語る雲児との対比です。第二夜~第四夜までと、この『前世を語る雲児/空船』のシーンは、一番最初に書きあげました。
このシーンも、最初は第三夜の風呂シーン冒頭あたりにあったのですが、なんやかんやでこの位置に。
話の筋が変わらない程度に時系列入れ替えまくるのはよくするので、ときどきものすごい矛盾が出てきたりします。
解説:孕み人魚と惡の華 陸一 じゅん @rikuiti-june
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