寿司問答

夏葉夜

寿司ネタ原理主義の《寿司ネタ》たち


 軍「じゃあ……マグロ殿は、軍艦巻きを寿司とは認めないと?」


 鮪「その通りだ雑種。所詮貴様は酢飯と海苔に巻かれた卵……貴様のカテゴリは、おにぎりと言ったほうがしっくり来るものよ!」


 軍「酢飯があれば寿司でいいだろう! マグロ殿とて酢飯の上に寝そべるばかり! それが寿司としてのあり方か!?」


 鮪「戯けた事を……俺様こそが寿司のネタとしての在り方だ! 酢飯を侍らせ酢飯を枕に醤油をあおぐ! そしてその酢飯を包み込む! それこそがネタの生き様だ! 断じて貴様のように、海苔に巻かれて酢飯の上で脳天気にあぐらをかいている阿呆とは違うのだ」


 ?「うんうん、珍しく僕と意見が合ったようだね」


 鮪「フハハ! よく見れば甲殻類の海老ではないか。どうやら貴様は、寿司としての在り方を分かっているらしい!」


 軍「……エビさんまで」


 海老「軍艦巻き君……君の寿司道は誇りが足りない。威厳がない。はっきり言おう、名前負けしているのさ」


 軍「誇り? 威厳? そんなものに拘るから、今の状況があるんだろう!?」


 鮪「貴様、軍艦巻きの分際で俺様に説教しようというのか?」


 軍「あぁ、そうだとも。もっと広い目で見てみろよ! 今や寿司界の派閥は混迷を極めている。海鮮由来の私たちが争っていては、陸からの驚異に飲まれてしまう」


 鮪「ほぅ、貴様は……身の振り方を真似ただけのだし巻きやハンバーグ、これらの凡俗に俺様が負けると? 劣ると言いたいわけか?」


 軍「その可能性もあるという話だ、マグロ殿」


 海老「軍艦巻き君は、随分と臆病ものらしい。だけど、君の恐怖はそれだけじゃ無いね? 他にもあるんだろう? どんな驚異が僕たちに迫っているんだい?」


 軍「あぁ……陸でも海でもない。出自の知れない奴だよ。ずっと、私たちの隣で当たり前のように寿司として振舞っている奴がいただろう?」


 鮪「……そいつの名前を言え、雑種よ」


 軍「いなり寿司だよ」


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