「3年以内に夢の全国大会、花園に出場できなければ廃部」という、
崖っぷちのラグビー部を救うため向高に赴任した国語教諭、三谷。
情熱あふれる彼が生徒たちと心を通わせ、躍進していく本作だが、
一貫して「戦略と挑戦」を魅せる展開は、単なるスポ根ではない。
多くの読者はラグビーに詳しくないだろうが、本作を読む上では、
ラグビーは15人制が主で、正月に花園があることを知っていれば、
過不足なく理解しやすい文章に導かれるまま、楽しめるはずだ。
三谷とラグビー部の3年間が詰まった13万字、あっという間だった。
15人もの大所帯で戦うラグビーでは、有能な1人がいても勝てない。
その1人とは、監督、エース、キャプテンのどの役割であってもだ。
One for all, all for one、ひとりひとりがアクティブに作戦を立て、
みずから動けるチームになることで、ひとりひとりが活躍できる。
タグに記載された「人工知能」に惹かれて読み始めたわけだが、
本作の本質はラグビーを通じて示される「戦略と挑戦」だと思う。
『もしドラ』にも通じるところがある、と言えばいいだろうか。
ビジネス書や自己啓発本より、「戦略と挑戦」を学べる作品だ。
身近に触れたことのなかった考え方がテンポよく示されていく。
未知を恐れず、次々と力を身に付けていくラガーマンたちに
共感したり驚嘆したりしながら、爽やかな気持ちで読了した。
新しい視野を拓きたいという願望がある人にぜひお勧めしたい。
ラグビーの指導者が、三年以内にラグビー部を花園へと出場させるために奮闘するスポーツ小説。
熱血と書かなかったのは、本作品が熱血、根性だけで奮闘する話しではないからです。
もちろん、情熱や精神論も十二分に描かれていますが、決してやる気がないわけではないがどこか悟ったような態度を示す生徒達を、精神論だけでなく論理的に口説き落とし、情熱を引き出そうと試行錯誤するところ。そしてなにより主人公が絶対的な指導者ではない、弱い部分や間違いに気づくシーンがあって、熱血と根性だけではやっていけない、そういうところに本作の面白さが溢れているのだと思いました。
何の気なしに働くコン応募作をズラーッと眺めていたら、気になる題名が目に止まりました。
『オレたちが人工知能を超えるとき』……?
AIと戦うのかな?
将棋やチェスのお話かな?
……なーんてクリックしてみたら、とんでもない。
熱血教師が弱小ラグビー部を更生する熱血ストーリーでした。
まずはこの意外性に着目しましたね。ラグビーで人工知能? 一体何だ? 俄然興味が湧いてきます。
題名とキャッチコピーで目を惹くという、ウェブ小説に欠かせない「最初の掴み」が大成していると言えるでしょう。これだけでも筆者のセンスが眩しいです。
(2017/12/19注釈・現在はタイトルを改題なされたようですね。今の題名もシンプルでスッキリしていると思います!)
肝心の内容も、角川文庫を意識して書いているのがよく伝わります。
語彙の豊富な、情報量の詰まった文体。
僻地へ赴任した主人公教師のカルチャーショックは、主人公を通じて読者に判りやすく追体験させてくれます。
何よりもラグビー部員たちとの折衝が面白い!
田舎のお気楽ムード、部活を遊び感覚でエンジョイするだけの生徒たちは、本気で花園なんか目指していません。そもそも田舎の高校は人数が集まらないという現実的な問題もあり、容赦ないリアリティが追い打ちをかけます。
少人数の7人制ラグビーなら、地元で優勝できる程度には才覚を持っている部員たち。
メインストリームである15人制ラグビーに出場できるのか。
題字の人工知能とは何なのか?
教師モノという、ともすれば手垢の付いたド定番な職業ですが、変に奇をてらったマイナー職よりも格段に想像しやすく、リーダビリティの高い小説に仕上がっていると感心しました。
田舎へ赴任したせいで、恋人と遠距離恋愛になってしまった哀愁もリアル……。
文句なしにオススメです。全話に応援コメントを書き込むくらい好きです。頑張れ三谷先生!
「三年以内に高校ラグビー部を花園に出場させる」。冒頭で告げられる課題。
主人公の前任者は明確な指標を持たずに、部員たちに当たり散らしただけ。
そのため部員数もそろわず、モチベーションは休日の草野球のようにどこか緊張感を欠いて――――
部長からは自主性を重んじて、過干渉しないでほしい。
改革を目指したいのに、周囲の教師からは威圧的な態度でマウントを取られる。
精神的に疲弊しても、肝心の彼女はその場にいない。
ある意味では無理難題に近い、それでいてクリアするタスクに満ちた状態の現状。
いきなり頭ごなしに持論を振りかざすのでなく、部員たち一人一人の個性や意見を尊重する。
ラグビーのみに専念させるのでなく、勉強や受験、生徒の進路と両立させる方法論を展開するスタンス。
かつて一世を風靡した、パワハラ上等の熱血指導ではない。それでも様々な高校で生徒を育てた主人公の、熱意のこもった指導に心打たれます。
テレビドラマを見ているような、丁寧な描写で読み進めていけます。
現在本編の年代は2015年。主人公は自身に課せられた課題、三年以内に部員たちを花園に導けるのか。
女子マネージャーたち、可愛い……(-_-).。o○0〇
あらすじから、マンガの「ルーキーズ」や「ジャイアントキリング」を思わせるものがあり、それらが好きな私としては、とても興味がある小説ということでクリック。
主人公の三谷太郎。彼は廃部の危機にあるラグビーを救うために行動を起こすのですが、基本的に冷静であり分析力に優れているようです。
熱血を内に秘めた感じでしょうか。ひと昔前のドラマのように怒鳴り散らしたりはせずに、ラグビー部の問題点に対して、どうアプローチしていくかをちゃんと考えていて個人的には好印象。
物語のほうは、ラグビー部員やほかの教師との不協和音などもあり、一筋縄ではいかない展開を予期させます。今後のラグビー部の成長に期待したいところですね。
皆さまも是非、監督業に一喜一憂する三谷太郎の物語を読んでみませんか(⌒∇⌒)