姉と弟のゴキブリ騒動記

由布 蓮

第1話

真夏の土曜日の夜だった。

高校3年で17歳になる姉の比呂子がバスタオルを巻いてお風呂場から出ようとしてドアを開けると、そこには真っ暗な廊下に大きなゴキブリがじっと見詰めていたのが事の発端でした。

「キャー…」

「ヒロシ、早く降りてこっちに来て助けてよ」

その途端、姉は思わず悲鳴を上げて大声を出して叫びました


その声に驚いた15歳になる弟の比呂司が2階の部屋から急いで下りていくと、姉はゴキブリを追い払おうとしていた。すると姉の胸元に着けていた真白い大きなバスタオルがはらりと落ちてしまい、それを降りたばかりの弟が見てしまった。

「ヒロシ、何処を見ているのよ。エッチ」

「やばい、お姉ちゃん、ゴメン」

そう弟の比呂司が言うと姉は開けていたドアを勢いよく閉めるとドア越しから言った。

「ヒロシ、早く出ていってよ」

姉の比呂子が言うと弟のひろしも恥ずかしそうに両親のいる居間に行ったまま戻る気配はなかった。

その間、ゴキブリは逃げもせず姉の廻りをウロウロしていた。

すると再び姉が大声で弟を呼んだ。

「ヒロシ、もう、早く片付けてよ」

弟も居間から大きな声で言った。

「ヒロ姉、ちゃんとバスタオルを着けたかい」

「もう着けたから、急がないと逃げちゃうよ…もう、早く来てよ」

「今、直ぐに行くから、そのまま何処にも逃げないように見張っててよ」

そう弟の比呂司が言った。

「分かったから早く来てよ。私ゴキブリが苦手なんだから」

姉の話が終わらない内に弟が脱衣室に入ると、姉はバスタオルを押さえたまま見ていた。

「ヒロシ、今、その洗濯機の横に隠れていたところよ」

「ヒロ姉、もう1つの灯りを点けてくれないかな、暗くて見えないんだよ」

すると姉はドア横にある別なスイッチを押すと、弟の後ろに下がったまま見ていた。

「いるいる、殺虫剤を渡してよ」

すると姉は棚に置いている殺虫剤を取り出して、そのまま手渡すと弟の比呂司は呟くように言った。

「おいゴキブリ、今から捕まえるからなー」

そう言って洗濯機付近に殺虫剤を撒いて暫く待っていた。すると姉を驚かせたゴキブリが苦しそうに逃げ回り、再び姉の足元に逃げて来た。それに慌てた姉は再び両手を離してしまい体に巻いていたバスタオルを再びはらりと落としてしまった。それを明るくなった洗面所で目の前で見ていた弟に向かって言った。

「エッチ、ヒロシ、どこを見ているよ」

そう言うと落ちたバスタオルを拾い上げて自分の体に巻くと、さっさとドアを開けて逃げて行った。ところが数分も経たない内に、姉は再び自分の部屋のドアを開けて顔を出して言った。

「ヒロシ、逃がしちゃダメだからね。私、大嫌いなんだから」

そう言うと姉はドアを閉めて鍵を掛けると出る気配がなかった。

弟も動きが鈍くなったゴキブリを隅に追い詰めてティッシュで捕まえると、その成果を見せに姉の部屋の前に立った。

「ヒロ姉、見てくれよ。大きなのを捕まえたよ」

弟は姉の部屋のドアを叩いて言った。

「今、着替え中なんだから早く捨ててよ」

姉はドア越しから言った。

「分かったよ…でも灯りが点いた時に見たお姉ちゃんの身体…綺麗だったよ」

宏は冗談を言うと、

「もう、そんな事、誰にも話さないでよ…もういいから早く捨てておいでよ」

「分かったよ、せっかく捕まえたのに…」

「それにヒロ姉のアソコにも黒いゴキブリがウジョウジョしていたよ。僕が捕まえようか」

「もう、あれはゴキブリじゃないの…」

「あれはね、女のアソコを守る大切な道具なんだから…」

姉が言うと続けて言った。

「それなら言うけど、ヒロシのアソコにもウジョウジョと生えってきたでしょう」

「えー、お姉ちゃん見たのかよ。いつ見たんだ」

「それは内緒だけど、私も誰にも話さないからね」

そう言うと、弟は捕まえたゴキブリを外に置いているゴミBOXに入れて戻ってきた。【了】

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