特別章 エピローグ:おぼろ 

 俺は目が覚めた。

 どうやら部屋の真ん中で、へそを出したまま眠りこけていたようだ。

 ごちゃごちゃした頭のまま、いつものように目覚まし時計を鷲掴みにした。

 え、と今は……うっそ、まじで?

 やばい、遅刻だ、急いで着替えを取りにクローゼットを開けて、着替えようとしたその時、俺はあることに気づいた。

「あ、今日は日曜か」

 いや違う、思い出さなければならないのはこんなことじゃない。手に握ったあの感触、あれは何だった?

 その記憶が少しずつ形作られようとしていたその時、俺はすでにスマホで電話をかけていた。

 もちろん相手は母さんだ、確認しなくちゃならないことがある。母さんなら知ってるだろう、何せ仲良しの吉岡さんのことなのだから。

 テュルルル、の電子音が響く、もう6コール目だ、いつも頼んでもないのに3コールで出るくせに、何でこんな時に限って……。

 突然の電話に母さんはびっくりするかもしれない、しかも何でそんなこと聞くのかって思うのかもしれない、そんなことを考えながらも、その時のテュルルル、の電子音は俺にとって永遠にも長い時間に感じた。


(特別章 おわり)

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なあ月よ、何であの時教えてくれなかった? 木沢 真流 @k1sh

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