Sex is broadcasted.

鯖みそ

Sex is broadcasted.

今日に限って、私は汗だくになりながら覚醒した。

ぐっしょりと濡れたシーツに、軽く恐怖を覚えてしまった。

これは何に対しての焦燥なのだろう、と。私を追い詰めていたものは何か、どのような夢を見たのか、皆目見当もつかないのだが。

私が起きるのと同時に、ラジオからどこかイギリス訛りの英語を話す男性の声が聞こえる。

「……えぇ、それでは次に、反白人政策を執ったことで有名な南アフリカ共和国のミシシッピートロサーモン氏をお招きしております。早速お話を聞いてみましょう。昨今話題になっている、朝鮮民主主義人民共和国が行っている政治犯の強制収容ですが、同じ独裁者として何か共通しているものはありますか?」

ちなみに私は、ヨーロッパ育ちのラテン系なので関連性はないのだが。


「………………例えば、どこかで政治的虐殺があったとしても私達は無関心を貫けるはずです。それこそイジメられている子供を無視するように。ああ可哀想に、誰がこんな酷いことをって具合にね。だからこそ私達はそれを逆手にとって、虐殺を扇動します。そうすることでニーチェの言葉を引用するならルサンチマンといったところでしょうか、彼等の憎悪を一心に集めると行動を統率できるのです。彼等がして欲しいことの反対を唱えると、彼等は私の思った通りに動いてくれる。さしずめ一党制は理想的な政治体制といえるでしょう」

私は見たことがある。南アフリカにいる人々の非道な行いを。オランダ系アフリカ移民のアフリカーナー。

何度も何度も柔らかそうな肌に刃を突き立てられて、強姦された女性。新聞紙に包まれ生きたまま火で丸焼きにされた赤ちゃんを。

奇しくもパロントロプスやホモ・エルガステルといった人間の進化過程、果ては人類そのものを生み出した「ゆりかご」と呼ばれる地で、これほどまでに残虐な暴力が横行するのは、神の怒りを買うのではないだろうか?(ちなみに私は無神論者だ)


ところで私は、一晩中おちんちんをいじっていた。オカズはハードコア・ポルノヴィデオ。

「それは素晴らしい外道っぷりですね!さすが頭がイカれた童貞ウンコ野郎は、言うことが違いますね」

「はっはっは。お褒めにあずかり、光栄だよ」

私はラジオを消して、気分転換に外を散歩しようとこころみた。

外の街路では、屈強そうなドイツ人の男性と瑞々しいイスラエリーとが互いに求め合っていた。

肌と肌を擦れさせて、獣のように舌と舌を出し入れさせている。

かと思ったら、背後から男が現れドイツ人の男の頭を金属バットでフルスイングした。あえなく、男は即死した。そうして困惑するイスラエリーを、すぐに脇に抱え浚っていってしまった。


私は、あそこまで勤勉にはなれないなと思った。


そのまま市街地へ向かう。


道すがら、東を向けば、五歳の孔雀が眩しい笑顔をふりまく。その鳥の両翼は先が無い。

西を向けば、征伐と称して一方的な惨たらしい死の数々。十字の柱に皮を剥いだ豚を縛りつけておいて火を焚き付ける。「今日はBBQだ」


市街地に着くと、ドデカイ看板が目に入った。

今流行りの98年モノの映画「シャンドライの恋人」。

目鼻立ちが通った若い黒人女性と、白人男性の情熱的なラブストーリー。

看板では、その二人があられもない姿で愛し合っている。

暇潰しには最適な映画だ。

劇場に着くと、意外にも空いていて、私はお望みの席で鑑賞することができた。


ふと物語の中盤で、インスピレーションが私の中で沸き上がってきた。創作意欲に駆られる。

「そうだ。皆でセックスすれば良いんだ。そうすれば関係ない。なんだってこんな簡単な事が分からなかったんだろう。早く取り掛からなくては」












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