神様のお使いで異世界に飛ばされたんですが

猫空

プロローグ

「ーーちょっと、異世界とやらに行ってきて」




────────────


 どうも皆さん初めまして、近衛 龍です。今、俺は異世界にいます。石造りの建物に道路も石造り。

いつかの時代のヨーロッパのようです。周りの人は普通の人や亜人種の表現が正しい人たちがうようよと歩いたり、馬の代わりに爬虫類っぽい生物に荷物を引かせたり、人を運ばせたりしています。あ、ケモミミ娘発見。かわいい。


何故、俺が現代世界から離れているかというと…


「おい、そなたが近衛 龍じゃな?」


 声がした方向は雲の上、その人物の後ろには後光がさしていているが、残念ながら逆光で顔が見えない。だが、これだけはわかる。モジャモジャしているということだけは。


「誰だおっさん」


 目つきの悪い三白眼を上にやり睨みつける。


「んもー、学校サボってタバコ吸ってるなんてそなたは不良か!この現代のご時世で不良か!不良!僕の名前と身分なんて教えないんだからね!」


 ケラケラと笑いながらディスるおっさん。さらに睨みつけると、


「やん、神様怖いぃ~ 」


 さらっと身分を名乗るのであった。


「ーーでは、本題へ入ろうか。現代世界で素行の悪いそなたには厚生する為に異世界へ行ってもらう。」


「はぁ?」


「こら、神様にそういう口聞かない。そういう訳だから行ってきて。もちろん親に許可は取ってるから」


 1枚の紙をヒラヒラと左右に振る。どういう原理か、地面と雲の距離の筈なのにくっきりと文字が読める。そしてそこには確かに母親の名前がかかれ判子が押されていた。


「ーーもちろん装備品はここで揃えてるからね、えーと、パンツでしょ、着替えでしょ、靴下でしょ、帽子でしょ、そなたは剣術が出来るそうじゃな、そなたの愛刀を入れておこう。タバコ…タバコは…仕方が無い。このワンカートンでどうにかするんじゃな」


 神様と言われるおっさんのトントン拍子に進む話にも限界がある。呆けた面を正気に戻し、


「いやいやいやいや、ちょっと待て!」


「なぁに?」


 顎に指を当て、首をかしげる。


「なぁに?じゃねぇよ!お前は俺の母親か!俺異世界に行くの!?え、何、許可証って何なの!?異世界ってそんな許可証1枚で行けんのかよ!ちゃんと許可とるとかあんた律儀だな!律儀な神様だな!」


「そりゃあ、許可くらい取るよ。この御時世誘拐だとかで捕まるのは嫌じゃからな。あ、声を荒らげるのは勝手だけど周りには1人で叫んでる痛い子にしか見えないよ」


 冷静になり、周りを見渡すと井戸端会議をしているマダムたちにチラチラ見られていた。頬を赤く染め、肩をすくめる。


「神様、やけにリアルだな…。そこは神様の力でどうにかすればいいだろ」


「それは上司に怒られちゃう」


「ファンタジー皆無!」


 またもマダムたちの視線を感じ、静かに背を丸めた。


「という訳で、また気が向いたら出てくるから行ってらっしゃ~い」


 そう言い放った直後、地面に黒い和が広がりその中に飲まれていく。


「え、ちょ、うわあぁぁあ!」


 ポンッと、その音の後にはいつもの平日の昼下がりの静寂だけが取り残された。


 そしてこの後、近衛 龍は異世界へ召喚された。

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神様のお使いで異世界に飛ばされたんですが 猫空 @Nyaa0726

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