最初の書き出し、「ドーシたラ」の一言。これだけで、あ、この人持ってんだな、と脱帽させられた。言葉を操るセンス、それをこの著者は持っている。これは努力だとかの容易なもので得られるものではない。
また著者の表現の秀逸さも特筆すべきだろう。例えば「美しい青い花」を、「美しい」も「青い」も、さらには「花」さえも使わずに伝えること、それこそが小説における表現なのだが、自分の身体と心理をひっくるめて桃と種の関係になんの前振りもなく落とし込んでしまったこの著者は、間違いなくその技を身につけている。当て擦りのような比喩は瑞々しくも毒々しく、読者の心にいがらっぽさを残してくれること請け合いだ。
短編どころかショートに分類される短い作品だが、濃縮還元100%のエロスとユーモアが読み手の感性をしっかりと刺激してくれるだろう。