最終話 堕天使と悪魔と

「ミントちゃーん、ライトくーん。早く起きて食べないと遅刻するよー!」


「今行くー!」


 私は自分の家の階段から下にいるお母さんに向かって返事をした。


「お二方、早く行かないと遅刻しますよ」


「誰のせいだと思っているんだ愛撫」


「『愛撫」じゃなくて人間だった時の名前の『縷縷亜ルルア』って呼んでください!」


 私と一緒に支度をしている堕天使が文句を言った。


 ところで、どうして朝からルルアさんが一緒にいるのかというと。


 前に堕天使が『・・・・・・だったら俺のところに来るか?』って聞いたでしょ。


 それでルルアさんはちょっと迷ったみたいだったけど『二人がいいと言うのなら』って答えて他の悪魔達から狙われないように私の監視役として一緒に住むことになったの。


 本音を言っちゃうと『命は狙われたけど、あんな堕天使よりキレイな女の人の悪魔に監視された方がマシ』だからね。


 本人から『元人間』だったって聞いて安心したし。


 最近はルルアさんのバンドゥー・ビキニにも見慣れてきた。


 堕天使とは違って、いつも悪魔の姿のルルアさんは人からは見えないのでお母さんに言う必要は無いし食べなくても生きていける、と聞いたので一緒に住むことを許した。


「ルルア。お前のせいだぞ」


「キャー! すみません~」


 あれから私達三人は学校の体育館に戻った。

 

 AIBUさん、もといルルアさんの演奏が再開されてライブは無事に終わった。


 帰りの会が終わるとルルアさんが校門前で悪魔姿のまま待っていたので一緒に帰った。

 

 さっきまで私の命を狙っていた人が隣で歩いていたので最初はすごくドキドキしていた。 


 それを察したのかルルアさんが私に優しく話しかけてきてくれた。


 最初は私もビクビクしながら答えていたけど、だんだん安心してきた。


 話していてビックリしたことがある。


 さっき言ったルルアさんが人間だったこと。


 私が生まれる前に死んだ後で悪魔になったみたい。


 理由はルルアさん本人も堕天使にもわからないらしい。


「あれから一週間以上経ったのか。早いな」


「お二人に会えて、こうして暮らしている今が幸せですぅ」


 一緒に暮らしてるとルルアさんは堕天使のことが好きになってしまったみたい。


 私に話す時は普通の話し方だけど堕天使に対してはかなり甘えた話し方で語尾にハートマークがついている感じ。


「着替えたし、行くよ」


「ああ」


「気をつけてくださいねー」


「行ってくるねルルアさん」


 部屋を出て階段を降りて、朝食や歯磨きを済ませた後お母さんにも挨拶して家を出た。


「そうだミント」


「何?」


 玄関前で堕天使が立ち止まると私に近づいてきた。


 するといきなり私の両頬に手を当ててきた。


「ちょっと何を……」


「お前」


 まさか前みたいにキス!?


 私は反射的に両目を強く閉じた。


「悪魔になる気になったか?」


「……へ?」


 意外な言葉に私は拍子抜けした声を出した。


「その返事だと、まさか俺がキスしてくれると思ったのか?」


「なっ!?」


「いいぜ好きなだけキスしてやるよ。俺は一度女とは何度でもしていい男だ」


 バチン


 私は思いっきりビンタした。


「ライトのバカ!」


 私は怒り狂っていたせいか堕天使のことを名前で呼んでいた。

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悪魔になんかなりたくないっ!①【悪魔になるって?】 初夢なすび @hatuyumenasubi

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