第25話 騙された

「堕天使! 生きてたの!?」


「勝手に死なせるな。あんなのじゃ俺は死なねーよ」


「バカな……」


 AIBUさんは私よりも驚いていた。


 そりゃそうだろうね。

 

 とどめをさしたと思っていたんだもん。私もだけど。


「俺は悪魔じゃない、堕天使だ。まだ恩寵おんちょうが残っている」


「おんちょう、って?」


 聞いた事がない言葉だけど。


「神からの恵み、だ。全ての天使はこれを受けて活動している。だが堕天使になると半分、悪魔になると全て無くなり天使としての活動ができなくなる」


「そうだったんだ……じゃあもし私が刺されていたら死んでいたって事?」


「そういう事だ」


 背筋が凍った。


 普通言わないでよ。逆に怖い。


「で、どうするんだお前?」


 堕天使が驚いて立ちすくんでいたAIBUさんに聞いた。


 私も助かって堕天使も生きていたからね。


「くっ・・・・・・」


 AIBUさんは羽を動かし始めて逃げようとした。


「待てよ」


「きゃあ!」


 堕天使が走り出すとAIBUさんを捕まえて後ろから抱きしめて倒した。


「離して!」


「離すかよ」


「悪かったわ。もう貴方達には手出ししないから!」


「まぁそうだろうな。で、どうするんだ? 俺の質問に答えろよ」


 堕天使は抱きしめたまま離さない。


 どうするんだろう?


「・・・・・・この街を出て行くわ」


「あてでもあるのか?」


「無いわ。でも食べなくても生きていけるから」


 悪魔って食べなくてもいいんだ。


「・・・・・・だったら俺のところに来るか?」


「「え・・・・・・?」」


 私が驚いた声とAIBUさんの声が重なった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る