アイドルグループと小説家になろう

とっきゅん

AKBとなろう

「小説家になろう」とAKB48を初めとする48グループはよく似ている。




 少なくとも私にとってはそう思える。


 両者について、私が仔細をよく知っているという訳ではないが、まったく無知でもないので、その知識を前提にして少し考察してみた結果である。


 まず、議論の前提として、幾つかの共通項を挙げてみよう。




 一、基本的に十代の中高生をターゲットにしていること(だが、どちらも三十代から四十代の顧客が多く存在する)。


 二、地下アイドル、ネット小説の違いはあるが、どちらもアングラ的サブカルチャーから出発していること


 三、常に話題や作品を提供し続けることを求められていること


 四、顧客の入れ代わりが早く、それどころかアイドル・作者の入れ代わりも激しいこと。


 五、卒業したアイドル・作者が一握りしか大成しないということ。


 六、どちらも総選挙・ランキングで順位付けされているということ。




 この他にも色々と考えられるであろうが、ざっと私が思いついた限りではこのぐらいでいいのではないだろうか。


 では、検討してみよう。




 この二つのグループは近年できた新しいビジネス・スタイルということではなく、今までに構築されてきたアイドル業界、小説業界におけるブームといえる。


 そして、共に一世を風靡している……ように見える。


 だが、そういうわけではない。


 共にパイが極端に偏っているからだ。


 偏った分野においては支配的地位を得たにすぎない。


 歌番組、グラビア、バラエティ等の芸能界の特に若い女性を使う分野と、ライトノベルという小説分野のことである。


 48グループは踊りについてはかなり重要視しているが、歌や芝居に関してはほとんど本人任せというレッスン内容のようだ。


 だから、各自は志望に合わせたカリキュラムとスケジュールを自分たちでやっていかねばならない。


 だから、アイドルとしての卒業を終えるとなかなかパッとしない。


 成功者はごくわずかということになり、卒業後だと舞台や映画、ドラマの仕事はなかなか難しい。


 グループの看板が外れるとキャスティングされることも減少するからだ。


 なろうから出た作家は、ほとんどがライトノベル関連であり、他の分野においてはあまり影響がない。


 なろう作品が売れているといっても、わりを受けるのはラノベ作家だけであり、他の分野―――ミステリー、歴史、ホラー、文学等が著しく売れなくなるということはあり得ないのだ。


 ごく少数の「脾臓……」や「ぼったくり」といった作品だけでは市場を制することはできないからだ。


 ランキング上位にはそれらのジャンルの作品はない。


 そして、売れているといってもそれは十万部前後が限界だ。


 この場合、「劣等生」などは考える必要はない。異常なまでの大ヒットがあったとしても、それがなろうだからという訳ではないからである。


 ラノベ大手の電撃はおろか、他の角川書店よりも流通に強い老舗出版社がお試し程度にしか手を出してこないのはそういうことだ。


 なろうが食いつぶしているリソースはラノベ限定なのである。




 アイドル―――というか女性タレント業界、ラノベ業界、この二つだけの閉じられた世界においてこの二者は強い人気を誇っている。




 では、この二つはいつまでも人気があるといえるだろうか。


 それは否としかいえない。


 なぜならば、どちらも促成栽培の中身の薄いスナック菓子かジャンクフードでしかないからだ。


 味に飽きられたら終わり。


 消費者はまた別の気軽に食べられるものに目移りするだろう。


 どちらもずっと味わっていられるだけの商品ではないのだから。


 実際に、AKBは48グループ老舗でありながら、他のNMB、SKE、HKTに客を奪われ、逆転現象すら起こりかけている。


 なろうも、カクヨム、その他の小説サイトのサービス開始により、その立場を脅かされている。


 ラノベ業界大手の角川書店が進出すれば、アルファポリス、ポニキャン、ヒーローなんていうレーベルは勝ち目が薄くなるだろう。


 バックの力が違うのだ。


 そして、なろうテンプレ作品はほとんど味が同じでそろそろ飽きられつつある。


 離れていく客を繋ぎとめることは難しい。

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