第4話 カラスの歌

刑務所に入ってる間に夢を見た。


また、大きなカラスがやってきた。今度は何となくでも、白く小さくみえた。

「私はやってはいけないことをした。」

僕はもう睨んではいなかった。カラスをチラッと見ると、コンクリートに胡座をかいて座り込んでため息をひとつついた。

「生死に関わる問題は自然の摂理なのだ。私はそれに反してみようと思ったのだ。お前の姿を見てな」

「白い格好がお似合いじゃないか」

「こんなものは恥でしかない。結局お前は大切なものを守っても、別の命を犠牲にした。自然の摂理なのだ」

「変えられなかった訳では無い。僕は大切なものを守ったんだ」

「人間の善悪ってやつか。はっはっはっ愚かしい」


僕はもう睨むつもりもなかった。大切なものを守れた。それだけで満足だった。


でもカラスは違ったらしい。

「愚かしい。結局は命が尽きた。お前は誰かの大切なものを奪う側になっただけだよ。全く人間とはこうも愚かであるのか」

「誰かの大切なもの?あいつを、あの悪漢を大切にしているやつなどいるものか」

「思い込みは認識をずらす。悪漢ではあったが、大切に育てられてきた。そして奴を大切にしていた人がいた。今度は復讐を受ける番なのだお前は」



なぜなのだ。

僕は常に被害者だった。何かの力がぼくの大切な人をいつも奪っていった。それなのにどうして復讐されなくてはならない。


「お前はバカをやったなあ。所詮苦悩渦巻くこの娑婆世界で生きとし生けるもの皆縁に紛動されて生きている。お前はやつと縁をした。そしてお前は新たな因を作った。結びは報いを受けるのだ」

「刑務所だ」

「違う。お前の大切なものを奪いに行くぞあの女は」

「なんで!!」


繰り返しじゃないか…それでは全て繰り返しだ。終わらないではないか…。


「お前が軽率なことをしたからだ…何も殺すことは無かったろうに」

「お前が殺れと」

「言ってはいないな。私は告げただけだ」

「!!??」


「愚かしい生き物だ人間は。はっはっはっ」

そう言って白いカラスは飛び去った。


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烏の歌 かさかさたろう @kasakasatarou

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