エピローグ

「あいつらいつも、食うだけ食って後片付けもしていかないんだよな」

「でも、喜んでいてくれるようだしいいじゃないか」

「まぁ、そうなんだけどさぁ」


 きゅっと軽やかな音をさせて蛇口を止めるクロエ。見事にクッキーがなくなった白い大皿を隣で皿を拭いているコトリに渡す。後片付け、という行為が珍しいのかなんなのかコトリはいつもにこにこ笑顔で手伝ってくれるからクロエはとても助かっている。ひとりでもできないわけじゃないが、作業にも効率というものがあるのだ。


「もうちょっと礼とかなぁ」

「私は言われたぞ?」

「コトにだけだよ、あいつら」


 クロエがすねたように眉をひそめれば、ほやほや笑っていたコトリがあわてて拭き終わった皿を台において。狼狽したように胸の前で手を振る。


「そ、その。・・・あの、私だけすまない」

「別にいーよ、コトが悪いわけでもないし。それにコトのクッキー美味しかったから。また一緒に作ろうね」

「う、うん!」


 花開くように顔を輝かせて、コトリは大きく頷いたのだった。


 さてさて、ここで味見の話を覗くのはおしまい。

 もちろんこれからもクロエはお菓子作りをするし、コトリと一緒に味見もする。

 でも、それは誰も知らなくていい話、クロエとコトリふたりだけの楽しみの話。


 そこまで見るのは野暮ってもんじゃありませんか?


 というわけで、味見の話はこれでおしまい。

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おやつの準備をしてるんだから、当然味見って必要だよね? 小雨路 あんづ @a1019a

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