Story:4

高校までの道のりは1キロ程。途中には、スーパーとコンビニが一つずつ、それと、駅前に居酒屋が4つ。後は市役所と図書館、小さなお店もいくつかあった。毎日ここを歩くんだな。と、当たり前のことを考えた。一緒に学校に向かう人の中には、わたしと同じ、1年生の校章をつけた人もけっこういた。

「1人くらい、友達になってくれないかな…」

自然と独り言が漏れていた。

学校に着くと、昇降口では男の先生が服装チェックをしていた。

「おはようございます。」

と言うと

『おはよう!お!1年生か!おはよう!』

と言われた。やたらニカニカした笑顔だった。なぜ、2回おはようと言ったのか。まぁ、正直どうでもいいが。

校舎の中に入り、少し屈んで上履きに履き替え、歩きだそうと上を向くと、目の前に紺色の背中があった。黒じゃない。詰襟じゃない。

女子だ。

わたしは

「おはよう。」

と声をかけた。するとその紺色の背中はツヤツヤのツインテールを揺らして(いや、思いっきり振りかぶって?)振り返った。ちょうどわたしの目の高さにあったそれは、思いっきりわたしの顔にぶち当たった。軽く目に入った毛先が、痛い。

『ご、ごめんなさい!ごめんね!ほんとごめん!!あの、すいません!もし、も、申し訳ありません!えっあっ面目ない!!sorry!あ!いや!ごめんなさい!ほんとに!』

...どんだけテンパっているのか。日本人が言いそうな「ごめんなさい」を一通り並べたてた彼女は、別にふざけているわけではなさそうだ。とても申し訳なさそうな顔をして、顔の前で手を合わせ、何度も頭を下げてくる。(ちなみに、なんとなく想像つくと思うが、その頭を下げる動作によって、ツインテールはわたしの足にバシバシ当たっている。が、彼女は気付いていない模様。)周りにもジロジロ見られるし、あんまり頭を下げられると逆にこちらも申し訳なくなってくるので

「だ、大丈夫だよ?落ち着いて。」

と言って、彼女の両肩に手を置き、頭を下げてくるのを止めると、

『ほんとにすみませんでした。』

と言って彼女は動くのを止めた。

「何組?」

『あの、8組です。1年8組。』

「うそ!わたしも一緒!」

『ほんとですか!?』

「あの...もしかして穂灘て『もしかして穂灘鐵道ですか!?』」

クラスを聞いたときとはまるで別人のように彼女はテンションが上がった。ツインテールの揺れが違う。

「そうだよ。穂灘。もしかして...あなたも...?」

『うん!良かったー!わたし、一緒に電車乗る人が同じクラスにいたらいいなって思ってたんです!』

「そうなんだ」

『あの...名前聞いてもいい...?』

にのまえ 笑璃朱えりす。」

正直言ってこの名前、女子っぽすぎて名乗るのが少し恥ずかしい。

『えりすちゃん!かわいい名前でいいなぁ!』

「あの、あなたは...」

とぼそ 陽蘭莉ひらり。変な名前でしょ。』

「確かに名字も名前も珍しいね。」

『これからよろしく。えりすちゃん!』

「こちらこそ。」


ふと周りを見ると、辺りはシンとしていた。

気がつけば、わたしたちは五分以上も寒い昇降口で話続けていたらしい。もう、昇降口には、一緒に電車を降りた人は誰一人いなかった。

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今日も寝坊した。 コメ。 @soybeans_flour

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