主人公の心理の流れが実に秀逸。 必読本作。
ただ魚食ってるだけじゃん。頭まで食ってるだけじゃん。頭とかワタって苦いよね。それでさ、結構しつこくその味が口の中に残るんだよね。お酒飲んだって、簡単に消えなくてさ、ついつい、たくさん飲んじゃうよね、その口に残った苦みだけで。もう一杯いっとくか。
読み進めながら、魚のワタのようにほろ苦い思いをもって浮かんでくる自分のアラサー経験。20代のように体力任せという訳にもいかず体調を崩したりして、メンタルもゆらゆらしてたな…。魚の頭を介して「彼」に一気に距離を詰められた気がする、とドキドキするリアルさ、1,500字のなかに過不足なく物語が語られる、その塩梅の良さ。何よりラストに待つ、彼女の掌にあったものがふっとすり抜けていく感覚。佳編なり。