お手元のdボタンで処刑してね♪

ちびまるフォイ

あなたはどの色を殺します?

「赤・青・黄色、リモコンの3色のボタンで

 今日処刑する人を決めてくださいね♪」


テレビでは処刑人が明るく説明。

まるで天気予報でも伝えるトーンで。


「投票結果がでました!

 一番投票された青色の人間が処刑されます♪」


今朝も当たり前に人がひとり消えた。



朝学校に行くと話題は処刑でもちきりだった。


「お前、誰に投票した?」

「青色に決まってるじゃん」

「つーか青以外に選ぶ理由なくね?」


毎日行われる処刑行為は

すでにエンターテイメントになっていた。


「お前は誰に入れた?」


「俺は赤色」


「赤ぁ? なんでだよ」

「フォロワーもみんな青色だったぜ」

「フレンドもみんな青色なのに」

「赤色なんて少数派だよ」


「いいんだよ、俺は赤色が違ってると思ったんだ」


「お前、少数派だなぁ」


ちゃんと考えてちゃんと選んだ結果、

少数派になることがかなりあった。


みんなは間違っているというけれど……。




家に帰ると、緑の服を着た男が立っていた。

趣味の悪い全身緑スーツの。


「やあ、君がこの家で処刑投票している人?」


「え、あ、はい。そうですけど……」


「確保」


あっという間に袋をかぶされて車に連れ込まれた。

気付いたときには知らない部屋に監禁されていた。


「ここは……」


部屋のいたるところにカメラがあり、

俺のほかにも2人が拘束されていた。


この風景には見覚えがあった。


「処刑投票者の……」


「気が付いたようだね。君らは次の処刑投票候補として選ばれたんだ」


全員の顔が引きつった。


「なんでだよ! 俺はなにも悪いことなんて……」


「少数派に投票したじゃないか」

「えっ……?」


「君たちは少数派に多く投票した。

 つまり、この世界の大多数とは違う意見をもっている。

 この世界にそんな異分子は足を引っ張るだけで邪魔なんだ」


「そんな……!」


リモコン投票は、自分のデータを送信する。


多数決により処刑される人間を選ぶだけでなく、

少数派に入れた人間を逆探知もしていたんだ。


「戦争も、競争も悪いことはすべて意見の衝突から生まれる。

 君たちは争いの火種になる危険分子なんだ」


男はひとりひとりにゼッケンを着せていく。

俺は青色のゼッケンを着せられた。


「大丈夫さ。この中で死ぬのはただ一人。

 自分の色が投票されないことを祈るんだな」







「最後に一つだけ、いいか」


俺は最後の願いを出した。


「ふふ、お前自分が投票されるのが怖いのか?

 まあいい。最後の願いくらい聞いてやる」


「使える色ボタンをひとつ増やしてくれ」


「あはははは! なにを言い出すかと思えば!

 使えない投票ボタンを増やして、

 自分の投票数を下げるねらいか? 無駄だ無駄だ」


男は笑いながら、投票ボタンの色をひとつ追加した。


「ミス投票を狙うつもりだろうが、

 君たちはわかりやすい色のゼッケンを着ている。

 どんなにあがいてもお前ら3人の中から選ばれるんだよ」


そうこうしているうちに、処刑投票がはじまった。





「リモコンの色ボタンで

 今日処刑する人を決めてくださいね♪」




投票結果はすぐに出た。


赤:0票

青:0票

黄:0票


緑:1,203,551,895票



投票の結果、緑色の服を着ていた処刑人が選ばれた。

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