歓びと哀しみの、ひと続きの物語


『何かになれるかもしれないと思った。』

それはきっと、現実にありふれた希望なのだと思います。


これは、諦めることで折り合いをつけたつもりでいた少年が、ありふれた希望を掴みもう一度世界を見つめ直す……そんな、どこにでもいるかもしれない一人の、どこかにあっただろう成長譚です。

柊アリアとの出会い。
浦賀ササメとの出会い。
高千穂カナンとの出会い。
犬飼チヒロとの出会い。
山上タイガとの出会い。
筋肉との出会い。

多くの出会いが主人公・真鍋マグに希望を与え、その在り方を一つずつ再構成していく様は、読んでいてなんとも心地の良いものでした。


けれど、物語は紡がれていきます。

この成長譚には、ただ一つの歪みがありました。
与えられた希望が飛獣漂う死地に在る。忘れてはいけないその事実は、やがて青空を割る罅の如く、物語に影を落とします。

今、彼を取り巻く世界は、ささやかな成長譚を踏み躙らんばかりの変化を迎えています。
大丈夫かな。立ち上がれるのかな。むっちゃ不安。
どうか、彼の行く先に答えのありますように。

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