第6話 試練 その壱
ラグナーン達が、一緒に訓練を初めて二年の月日が流れ、ラグナーンも18歳になっていた。このころから、ラグナーンは、きれいな黒髪を伸ばし始め、ちょうど後ろに束ねられるぐらいまでの長さになってきた。相変わらずシューラーは、美しく気品のある井手達で訓練を受けていた。ラグナーンからのデートのお誘いも頑なに断り続けていたシューラーであるが、逆にラグナーンのしつこさ、しぶとさが何だか、かわいらしくすら思い始めていた自分に気付きはじめていた。サーキアは、表向きは平静を装っていたが、内心、ラグナーンの天性の素質に嫉妬するとと同時に畏敬の眼差しを送っていた。お調子者のトーシンは、ただ、ただラグナーンのずば抜けた才能に感服するばかりであった。そんな折、四人に試練が与えられた。それは、四人で協力して、どこかのルーセに生息する大蛇の生き血を確保するという使命であった。その大蛇は、ロタチオマーヤと呼ばれる大蛇で、その生き血には細胞を活性化するタンパク質、ギルガゴンが凝縮されており、それを精製することで“ギルチリン”を作ることができる。“ギルチリン”は、トルチェ部族に昔、存在していた秘薬であり、健康体に使えば、若返りの効果が得られ、病体には、著しい改善効果が見られる。しかし、このロタチオマーヤが、ものすごく獰猛で、しかもギルガゴンが体内で作られるため、仕留めるのは、ほぼ不可能に近いのである。そのため、“ギルチリン”が存在することが稀であり、最後に作られたのは、100年以上も前の話である。こんなとんでもない試練が課されたのも、アーリアであるラグナーンの力量を測るためである。ラグナーン以外の三人は、すぐにそのことを察知し、ことの重大さを痛感した。
“よーし、イッチョやりますか?”
と呑気に答えるラグナーンに対して、他の三人は呆れ顔であった。
“とにかく、私たちは、チームなのだから、ちゃんと役割を決めて、しっかり目標を
達成しないといけないわね“
とシューラーが言った。
“そうだね。ちゃんとプランを立てよう”
とサーキアが同意した。
“じゃあ、僕が、“ディータ―”の役割にぴったりだから、“ハジュナー”と兼任するけど、それで良い?“
とサーキアが言った。
“そうね。それが賢明ね”
とシューラーが同意した。
“じゃあ、私が“ネクター”。あんまり“ハジュナー”には向いてないし。“ネクター”として、みんなの帰る道をしっかりと確保しておくわ“
とシューラーが続けた。
“じゃあ、僕も“バルスナー”と“ハジュナー”を兼任するよ。“
とトーシンが言った。
“では、私は、みんなを引率する役?でいいのかな?”
とラグナーンが、お茶らけて言った。
“それじゃあ、これでいいかしら?”
とシューラーが、ラグナーンをガン無視した。
“期待してますよ!アーリア殿!”
とトーシンがラグナーンを担いだ。
“それじゃあ、みんな、準備をして、一時間後にここに集合ね”
とシューラーが指示した。
それぞれの思いはさまざまであった。その任務の重さにシューラーは、泣き出しそうであったが、それだけは死んでもできないと唇を噛みしめて家路に急いだ。それは、サーキアも同様で、逃げ出したい気持ちに駆られるのを、必死で振り払っていた。トーシンは、折角のチャンスを決して無駄にしないぞ!といきこんでいた。それとは真逆に、ラグナーンは、ことの重大さなど、気にも留めず、シューラーに良いところを見せようとワクワクしていた。
ガートリル:異世界を繋ぐ者 Chocho @toyo4811
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ガートリル:異世界を繋ぐ者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます