第2話 「殺すか殺されるか」
「誰だ?」
あれは……ネックス。
といっても同じ職場だし上司でもない同じ立ち位置だ。
「俺だよ、オルダーだ」
「驚いたな、発電所に逃げ込んだ奴が俺以外にも居たなんて」
ネックスはそう言った。
「確かにな、だが、ここもそう長くは居れない」
他国の兵士かもしれない奴が発電所に入ってくる音が聞こえる。
ダンダンッダッダッダ
足音だ。
「他国の兵士かもしれないね」
ネックスは小銃を構えてた。
「おい何考えてる! 」
奴には逃げるという発想がないのか?
「簡単な事だやれば、済む」
ネックスはそう言った、かつての同僚とは思えない勇ましくも少し冷酷な顔だった。
「おいおい、殺されに行くようなもんだ、俺は以前パワーアーマーの奴と戦ったぞ」
ネックスは話を聞いて少し動揺したが納得したと言った顔をした。
「なんでそんなスーツを着てたかよくわかったよ、あんたにも手伝ってほしい、この発電所に俺より前から居たってことは充電もばっちりだろ」
ネックスはそう言った。
「殺すメリットなんてあるか? 」
俺は正直戦いに関してまだ肯定的というか割り切れてない。
それなのにこいつときたら、逃げればいいものを戦おうとする。
「あんたも多分殺したな、だからこそ"殺すメリット"、なんて言うんだろ、内心勝てると思ってるわけだ」
ネックスは正直鋭い男だ。
だからこそこの状況でこいつが戦うといえばそうなんだろう。
同時に自信家でもあった。
「わかった、あいつらには殺されかけたしな、でも敵か味方かわかってからだ」
一人で発電所で暮らし死んだ仲間について考える時間は俺にとっては苦痛だった。
この戦地で戦うことによって強く生きれるならそれもいいかもしれない。
今は自分一人のことだけだが、守るべき人に出会えば戦わざるえないだろう。
カタッカタッ
この部屋に近づいてくるのが聞こえた。
ここは作業員の休憩室だった。
もちろん作業にはパワーアーマーを使うので充電器もあったってわけだ。
使ってないアーマーもあるようだな。
しかし、バグが起きてないパワーアーマーだと戦えば規定違反で強制解除だろう。
「誰か中にいるのか?」
ドアが開こうとしていた。
ネックスはドアノブを引っ張りあえてドアを開ける。
いきなりのことでドアノブを握ったままの兵士は転倒する。
ネックスは銃を構えた。
「何しに来た、どこの軍だ、抵抗はするな、仲間だろうが、お前らは所詮偵察隊ってとこだろう、こっちにはパワーアーマーを来た奴がいるんだぜ」
銃口を向けられた兵士は喋りだす。
「わっわかった、撃たないでくれ、ブライトもわかってくれるだろう」
「何が起こってる、ウェイトを解放してくれ」
もう一人の兵士は銃を捨てた。
「ネックス、なんだか敵軍って感じの様子じゃないようだが」
正直所属不明の軍隊と戦っているので勘はあてにならないが。
「君たちは理解してないようだな、僕たちは国連ソルジャーだぞ?」
ブライトは言った。
「国連……ずいぶん地味な装備だな? 」
国連軍というと国連のマークのついたパワーアーマーが特徴的だ。
だがこいつらはパワーあまーはおろか国連のマークすらもない。
汎用的なレザーアーマーだ。
「偵察隊がアーマーで動いてるとでも?」
ブライトは言った。
「わかった、だが証拠がない、こっちは何人も知り合いを殺されたんだ」
ネックスは言った。
「ちっ、行動で示したほうがよさそうだな」
ブライトは、持っている装備の予備と食料、医療品を差し出した。
「とっておけ、装備は今すぐ着ていい、レザーアーマーとはいえだいぶ違うぞ、防弾性は新技術でとても高いしな、それでも武器の技術の方が先を行っているから死ぬときゃ死ぬ」
「FastAidじゃないか、機械が適切な処置法を教えてくれるやつだよな」
ネックスが言った。
消耗品としてのイメージが強い軍隊のFastAid、だが高性能なコンピューターが処置方法を教えてくれるため、中の医薬品が尽きても役に立つ。
「しかしお前ら強いし、やたら軍の用品に詳しいな、たしかライデン・フラッグの市民は戦闘訓練を受けているのだっけ」
ウェイトは言った。
「まぁ全員が義務教育として多少の戦闘のノウハウを知ってるからな」
ネックスは言った。
ああ、確かにこんな戦争国家だから国は市民の為に戦闘技術を教えてるな。
厳しい教官がいて、そいつは軍隊から来てたらしいけど、その時はいい迷惑だって思ったな。
今となっては、必要だったってわかったわけだが。
「正直な話、仲間と連絡が取れなくて困ってる、国連は奴らを甘く見過ぎていた、これでは脱出ができるかどうか」
ブライトは言った。
「人数が足りてないのか?」
この1都市だけの鎮圧ならそう難しくはなさそうだが。
「次々とライデン・フラッグには所属不明の兵隊が来ている、しかも、国連が最初に投入した数が少なすぎた」
犯罪者鎮圧と思ったらわけが違ったようだな。
「正直な話、もはやライデン・フラッグっていうより、あの所属不明が問題だ、どこの国のどの組織があれだけの軍勢を指揮しているのかな」
ウェイトは言った。
「わからんが、国連は管理の外の戦争を許さない」
ブライトは言った。
管理の中の戦争は認められるということでもある。
国連は一応はほとんどの国が加入している。
国連の目的は、犯罪への対抗と戦争の激化防止である。
戦争に関するルールも国連で話し合い発行したものだ。
国連は戦争については1対1で宣戦布告等のルールが守られていれば基本的に関与しない。
この1対1というルールで世界戦争が避けられてきた。
その反面戦争を許可するのでいつまでたっても戦争はなくならなかった。
正直国連が正しいかどうかは俺の中では微妙だ。
彼等のいることで世界の崩壊が避けられたのか平和が妨げられてるのか。
「わかってることは少ないが、一般市民ではなく民兵として扱ってもよろしいか」
ブライトは言った。
「それになんのメリットがある? 」
ネックスは言った、ネックスは戦闘好きになったわけではなさそうだ。
「現状君たちを安全な場所まで導くのは無理だし僕たちもきっと死ぬ、このままだとな、2人は絶望的だ、だけど4人なら? 1人はパワーアーマーを持っている」
ブライトは言った。
「それなら断れないな」
俺は言った。
正直結局戦う以外の選択肢はないだろう。
「ちっわかったよ、そこのウェイトだっけ? そいつよりかは俺のほうが強いって証明できるぜ」
ネックスは言った。
「おいおい、あんまりなめないでくれよ」
「そうだぞ、一応こいつは国連兵士だからな」
「一応ってなんだよ」
「一応どうしてきてここまで来たか話すか、仲間はパワーアーマー隊に捕まって逃げ切ったのが俺ら二人だった」
ブライトは言った。
「じゃあ奴らの特徴は知らないんだな」
一応あの特徴的なパワーアーマーの仕組みについて教えておいた方がいいだろう。
「知ってるのか? 」
ブライトは言った。
「もちろんだ、俺は一人倒した」
事実だし、ここは仲間の士気をあげるためにも言っておこう。
彼等は俺に期待してるようだしな。
「なんてこった、ようやく生き残れるかもしれないな」
ブライトは言った。
「当面の目的だが、戦地からの離脱でいいよな」
ネックスは言った。
「賛成だ、帰りたい……」
ウェイトは言った。
「よし、じゃあ生き残ろうぜこの4人で」
こうして工業用アーマーと生身3人の小隊ができたのであった。
イエロー・メット ドヴァクマ @dovakuma
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