イエロー・メット

ドヴァクマ

第1話 工業機体しかない

「いやー、疲れたな」

俺の名前はオルダー。

街の工事に駆り出されている。

だが、時代は2100年。

パワードスーツは介護用などの用途から幅広く使われるようになった。

貨物用、工事用……そして戦闘用。

各地で戦争が起こっていて、この国ライデン・フラッグもまた戦争をしている。

つってもこの国はこの1都市しかない。

だが、軍事技術が進んでおり戦争で手に入れた領土を切り売りしているのだ。

なぜ売るのか。

それは、精鋭部隊主義にある。

精鋭兵以外は規律を乱し軍としての強さを弱くするというものだ。

よって兵士を分散させるわけにもいかずこの1都市のままってわけだ。

どこかのストラテジーゲームに1都市チャレンジっていうのがあるが、これを現実で行っているのは驚きだ。


チリリリリ

うん? 昼休みのサイレンはさっき鳴ったはずじゃ。

「敵襲! 」

プウウウウウ

「やばい! 」

周りもキョトンとしていたが外のジェットパックの音を聞いて察した。

他国が攻めてきた。

なぜだ? 基本的にライデン・フラッグは隣国とは戦闘をしない。

今戦争中なのはビリー・グランドだけだ。

これは、裏切り……?


作業員は逃げていくが、逃げ切れず殺されていくものが入口のほうが見えた。

「終わったか……? 」

そう考える程の無残な姿。

倒すとか言えばオブラートかもしれないが要は、殺し。

殺し合いじゃないこの場合一方的な殺し。

血飛沫を浴びても冷たい機体は何も感じていない。

殴っても自分に痛みはない。


そして機体がヘルメットから煙を吐きながら近づいてくる。

自分の番だ。

ドシ……ドシ……。

プシュウウ……。

ドンッ

壁まで追い詰められて、作業用の機体にぶつかった。

「フハハッハ」

クレイジーな軍人の叫び声が聞こえる。

あの様子は、交戦意欲増幅装置?

軍法で禁止されているいわば電子ドラッグ……。

くそ、何が起こっているんだ。

生き残る方法……ないか?

残されてるはずだッ……!

人には生きるチャンスが……!

答えがないわけない、運命は変えられるはず……。

とんでもない事かもしれない。

「キャスト! 」


【キャスト します】

作業用の機体が俺に纏わるように装着されていく、


ガシャン。


【作業員は規律を守るべし】

【第一 作業場での作業以外の機体の使用の一切を禁ずる】

「それどころじゃねぇ! 」

黄色いヘルメットにゴーグル型の直使用のガラス。

緑色のボディ。

作業用のアタッチメント用プラグ。

武器がねぇ……。


「面白いぞ! ここに来ていてもまったく"戦え"なかったからな」

しょうがねぇ、殴るしかねぇ。

バコンッ。

鈍い音がする。


【規定違反です、ただちにやめないとスーツの強制キャストアウトをします】

「くそ、こんな時に……」


向こうの戦闘用機体は、鉄仮面のような見た目に中世風とも思える鉄鎧。

しかも持っているのは電流が流れる剣。


「死ねッ! 」

腕で受けるが、電撃も衝撃も喰らった。

ビリイッ

ジジジ


【規定違反deた"""""@@@@】

メッセージが…!?

バグが起きている?

今の電流のせいか、戦えるかもしれない。


振り下ろされる剣の刃掴んだ。

ビリリ。

「ウグッ」

さすがに何度も電流を喰らうときつい。

口から血が出てきているようだ。

確認はできないが。


向こうも、効いているのがわかっているから、また剣で斬ろうとしてくるだろう。

ブンッ

シュッ

やばい、避けるのだけですごい疲れる。

足か笑ってる。


「往生際が悪いな」

ブンッ

シュッドゴーン

避けようとして作業用の道具があるところにダイブしてしまった。

近くにあったクレーンまで道具がなだれ込む。

グラグラックレーンが今にも落ちてきそうだ。


「終わりだ」

倒れてる体制で見えたのは相手の剣。

その時俺は死の危険を感じ、スローモーションに見えたのだ。

何かないか……ここまでなんとか生きれたならあるはずだ。

【作業用ドリル】

これか……。

機体がバグっているがこれはアタッチメントを付けて電源供給すれば動くし動かすのも手動だ。

カチャッ

ドリルを持ち上げ腕のアタッチメントにはめたときにもう剣が間近だった。

ドリルと剣は交わる。

電流が流れるが、俺はすかさず、スイッチを押した。

ブウウウウン。

ガガガガガガガガ

パリーン。

相手の剣が……折れた!


「馬鹿な! なんという運だ くそドラッグで正常な判断ができなかったか」

思えばこの兵士もドラッグで高揚しているだけかもしれない。

だが問題ない、背中についたコアを破壊する。

「うおおおお」

ウィイイイン

横にドリルを振り回し兵士は倒れた。

ドリルで機体が削れているようだ。

「ぐうううう」

衝撃はすごいだろうな。


「終わりだ! 」

ドリルで背中のコアを削る。

ブイイイン。

ふと見えたのは会社のロゴだった。

【ゴライアス】

知らない会社だ。


バコオオオン。

光と共に機体が爆発する。

シュウウウ。


「大丈夫か? 」

俺は兵士が倒れている場所へ行き、死んでいるか確認をした。

苦しそうな顔をしているがまだ生きている。

「良かった……」

その時だった。

『デーモンシステム起動』

そういうアナウンスが聞こえた。

兵士は起き上がった。

いやでも、兵士は……。

「もうやめてくれ!! 」

正気に戻っているのか?

しかし兵士は俺の事を殴ろうとしてきた。

ドリルは倒れた場所に置いてきてしまった。

かろうじて受け止めるが、威力がすごかった。

剣よりやばい。

見ると兵士が血を吐き始めている。

「もう動けない」

しかし兵士は俊敏に動き蹴りやパンチなどを繰り出し俺はモロに受けてしまった。

「がは・・・」

兵士が死んだようだ。

「デーモンシステム、着用者が死亡、以後AI制御で筋肉を制御」

動く!?

カンカンッ

死体の攻撃を受けながら俺は起こっている状況の異常さを体感していた。

死にそうだ。


その時だった。

作業用のクレーンが死体の目の前に倒れた。

ドゴーーン

『動けません、機体に異常あり、デーモンシステムを終了します、データをアップロード中』


「終わったのか……」



数日後……

俺は他国の兵士から隠れる為に隠れて生活していた。

幸い機体の充電ができる発電所に隠れている。

普通は永久機関だが俺らの使う作業用の旧式は充電式だ。

その代わり電気を大量に消費する機器を使える。

もはや食べるときもマスクだけを外して機体と同化していた。

動くのはしんどいが機体だけ運ぶのも苦労するし、奇襲も怖い。

だが、そろそろここの食べ物もなくなりそうだ。


「おい、ここは見てないだろ」

声!?

他国の兵士か!?

ヤバいぞ……、出口に行かないと。


「何やってるんだ? 」

そんな時だった、まさかあいつと再会するとは……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る