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そこには、ただの石が入っていた。いや、正確に言うと、ただの石のように見える石が入っていたのだ。見た目はなんの変哲もない石だ。少し光沢があって濃いグレーだったので、高級な石だと思う人もいるかもしれない。でも、宝石ほどの輝きはなかった。
なんだ、普通の石じゃないか…。これが儚石?本当に願いが叶うのか…?
半信半疑、どころではなく一信九疑くらいの気持ちで、僕はその石を取り出そうとした。すると、その石は不思議に温かかった。心なしか、振動している気がする。しばらく触っていると、それは心臓の鼓動のように規則的に揺れていた。中に何かのパワーがあることは、間違いがなさそうだ。
さて…と。こうなったらまず、本当に願いが叶うかどうか、試してみないとなぁ…。
ふと、文芸冊子のページがめくれているのに気がついた。さっきまで見ていた儚石の探し方の次のページが見える。そこには、こうあった。
「儚石を使った願いの叶え方」
これは、見るしかない。そう思って、僕は冊子を手に取った。
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儚石が見つけられた貴方、貴方は心に「飢え」を感じているのですね。
さあ、何を望みます?
やり方は簡単。儚石を持って、心の中で願い事を3回唱えます。その後に、「代償として、〜〜を差し出します」と唱えれば、叶えてくれるでしょう。
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僕は、そこまで読むやいなや、冊子を閉じて何を望むか考え始めた。
何がいいかなぁ…やっぱり、この時期だし、冬の文芸冊子に書く話のプロットかなぁ…いきなり彼女とか望んでも、代償大きそうだしなぁ…。
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン。その時、17時の鐘が鳴った。
そうだ。石も手に入れたことだし、さっさと家に帰ろう。僕は儚石を匣の中に戻すと、電気を消して、部室を後にした。
もう大分暗い道を、少しスキップでもしてしまいそうなほど興奮して、僕は急いで家まで走っていった。
儚石 Silk tree @FallRedRice
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