「月刊オカルト十一月号」より抜粋

今年の八月、中野区のコンビニで商品に血液を混入するというなかなかショッキングな事件があった。当初容疑者に浮かび上がったのは、近くのアパートに住む相沢美姫さん。彼女は奇怪極まる行動を度々取っていて、混入された血液からも違法麻薬の成分が検出された。そして家宅捜索の結果、数種類の麻薬が入ったクッキーが発見された。なんとも大麻クッキーを連想させるものである。

 そして九月の半ば頃、警察に匿名の電話がかかり、相沢さんの居場所を通報してきた。それによれば、福島県のとある山中であるという。諦めかけていた警察側が重い足取りで向かったところ、相沢さんの遺体が見つかった。半分野犬に食われ、半分腐敗した状況であったという。

所持品には携帯も財布もあり、何も取られていないところから物取りではないだろうという判断が下された。

 携帯には、自身は犯人ではないという内容の長文メールが送信されぬまま残されていたそうだ。そのメールには、相沢さんの部屋の隣に住む金城唯容疑者と、下の階に住む宮部かおる容疑者を示すような文章があった。警察が事情聴取を行うと、二人は素直に容疑を認めた。

 宮部容疑者は相沢さんに愛犬を殺害されたとして、復讐しようとこの計画を立てた。商品に血液を混入したのも、宮部容疑者である。動機は、相沢さんの社会的地位をどん底まで落としたかったからとしている。金城容疑者は毎夜行われる儀式のせいで夜も眠れず、子供の将来の不安から、この計画に加担したとしている。その際、金城容疑者は宮部容疑者に、「ちょっと脅して出ていくように仕向ける」と言われていて、殺すつもりはなかったと供述した。

警察は宮部容疑者を殺人の罪で、金城容疑者を過失致死及び殺人幇助の罪で起訴した。

 それからもう一人、逮捕された人間がいる。それは、金城容疑者とは別の、隣の部屋に住む高田修三容疑者だ。

住民には内密に設置した監視カメラに、度々高田容疑者が何かを郵便受けに入れているのが映っていた。事情聴取で一悶着あったらしいが、最終的には容疑を認めた。どうやら高田容疑者は麻薬の仲介業をしていて、新製品を身近な人間で実験したかったらしい。

 さて、これで万事解決めでたしめでたしという訳ではない。

なんせ、これはオカルト雑誌である。自由奔放に書かせてもらえているが、こんな怖~い事件がありましたよ、では終われない。

 さて、ではこの事件のどこがオカルトであるか。それは、携帯に残っていた長文メールである。

メールの内容は、自身が結婚詐欺に逢い大きな痛手をし、麻薬入りとは知らずにクッキーを食べ、そして自分が殺される様を描いた内容であった。それは本人しか知りえない、身内でさえ知らない情報のオンパレードであったという。

しかし普通、自分が襲われた時のことなど書けるだろうか?

もし仮に、容疑者二人が去った後も息があったとしよう。しかし、メールの最終保存時刻が死亡推定時刻より半日も後だったのだ。

これはなかなかにホラーな話ではないだろうか。

 鑑識によれば、携帯に指紋は相沢さんの物しか付いていなかった。

普通誰かが手袋をした手でキーを操作したのなら、指紋は掠れて見えるそうだ。しかし、この指紋はくっきりとした物であったという。

現場でも、野犬と容疑者二人の靴跡は見つかったが、その他は見つからなかったという。発見されたのは山奥で、周辺の住人も滅多に立ち入らない場所だそうだ。

そうなってくると、匿名の電話も怪しくなってくる。かろうじて、匿名の声は女性であったという情報が警察側から公開されていた。

であるならば、相沢さん本人が見つけてほしくて警察にかけてきたのかもしれない。念のため書いておくが、容疑者二人は匿名の電話などかけていないそうである。相沢さんの亡霊が、自身の容疑を晴らそうと携帯に念を送ったのであろうか。

                         完


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