すべてのしみったれた童貞に贈る

 王道ラブコメってのは、昔から都合よくできてるらしい。まさかこんなのあるわけないだろとか、現実離れしすぎてるだろとか、作者のオナニーだろとか、そんなことをぐちゃぐちゃわざわざレビューで言ってくる意地の悪いめんどくさいオタクの中でも最悪な部類のオタクが、ちょっとどころか結構たくさんいるでしょう。まあそうだよね、都合のいいラブコメってのは読んでいるとなんだよこれふざけんなよって簡単になってしまうんだけど、書くと案外に難しいものです。だってね、オナニーになっちゃうんだもん。これ本当(は?)。書けばわかるよ。
 でもね、こういう文法で書いたのはきっと初めてだと思う作者に贈りたいわたしのまず一言というのは、よくも清々しく童貞を幸せにしてやったなということなんです!
 ラブコメってのは、必ずしもぐちゃぐちゃしたままならない人間関係がどうにかこうにかやっていく様とか、あるいは歪みきった人間のぶつかり合いを愉悦とカタルシスに任せてぶっ壊すみたいな、そういうのじゃなくていいんだと思います。もっと言えば、むしろこういう願望に満ちた、こんなこと起こってくれたらいいなっていう、すごく生々しい欲にまみれたご都合主義こそが、ラブコメらしいラブコメなんじゃないかとさえ思いました。
 ずっと報われない、トラウマのせいでうまくやれない、どうにも人付き合いに自信がない、彼女を作ろうにも自分から動くエネルギーがない、どうして俺ばっかり、そういう鬱屈したエネルギーがこのむずがゆいラブコメというバケモンじみたドロドロのなんらかのアレになるんだ。人間賛歌だ!
 この、そのままでは見るに堪えないとてつもない性欲とか性欲とか性欲とか性欲とかその他もろもろのごた混ぜ天ぷらギットギトみたいなやつを、それこそデコレーションケーキみたいにうまく飾り付けて、食わせる。他人に食わせる。これですよ。
 その点で、ようやくだけどこの作品についてしゃべる。会話はラブコメの命ってくらい大切だけれど、この作品の会話はかなり生き生きしていると思います。コメディというくらいだから特に、サンタクロースジョークがいい味を出している。みんなが考えるサンタクロース像と、現実のサンタクロース事情のおかしな乖離。ブラックじゃなくて赤と白、なんて実にいいセンスだと思う。楽しい。素直に楽しめた。
 その点、これは期待しているからはっきりと言うけれども、期待だからこそのこれなのでアチャーぐらいに思ってそんなに思い詰めないでほしいのだけれども、女の子のほうから処女とか言わせちゃったのはちょっと、ちょっとだけ鼻についた感がある。僕なら、いやこれも君だから言うのだけれども僕ならば、男から言わせちゃったかもしれない。なんかもう、こういう場合にはね、読者の性欲よりもキャラクターの性欲をぶちまけちゃったほうが、実は読者は作者の汚い性欲を感じなくて済むと思うんだ。男の子がこんなのこれからの人生でも二度とないたった一度のチャンスだと思って、性欲が爆裂して「彼女」と言いたかったのについ「処女」とか言っちゃう。女の子はドン引き。このドン引きというプロセスで読者のドン引きとうまくシンクロするので、読者の心は作品から離れない。うまく寄り添ったまま、けれど最終的にはやっぱり女の子もまんざらでもないので「べつに処女あげなくもないですけど」みたいな、それとなくチョロい感じをちょっとずつやる。ここのさじ加減が大事だと思う。あーもうなんだこれよ。レビューじゃないよこんなの。このぐらいのことをね、思っています。期待してるんですよ。
 次も、期待してます。何度も言うけどね。よろしくお願いします。そして他の読者のみなさんは、このドロドロデコレーション性欲をじゃんじゃん読んで、ボロクソに言おうね。ワシみたいに遠慮せずバカスカ言おうね。
 やっちまえ!! 殺せ!!!!!!!!

 かかってこい。