まつりのあとで

めらめら

まつりのあとで

 今年の『プロジェクト』も、どうにか無事に乗り切る事が出来た。

 期日通りに仕事を納めてからの、打ち上げをかねた忘年会で皆テンションは最高。

 部下のエルフ達の無礼講スレスレのはしゃぎ様に呆れながらも、私自身も大いに楽しく飲みに食い、そして気が付けば、終電で終着駅だった。


「参ったなぁ」

 最寄りのバス停まで足を運ぶも、こちらも既に運行終了。

 仕方ない。部下に迎えをやらせよう。

 既に年末休暇だからブツクサ文句を言われるだろうが、背に腹は代えられない。

 そう思って、呼び鈴に手をかけながら辺りを見回し、やっと気付いた。

 何時から其処にいたのだろう? バス停のベンチには女の子が一人。

 まだ小学生だろう。長い黒髪。愛らしい貌。

 だが、膝を抱えながら微動だにせずその貌がジッと、私の事を恨みがましい目で睨んでいるのだ。


「お嬢さん。こんな時間に一人で何を?」

 不審に思ってそう訊く私に、


「どうして、今年は来てくれなかったの?」

 少女が、不満気な声でそう返して来た。

 今年は? もう『制服』は着ていないのに、私の事を知っている?

 だが妙だ。『良い子』の家には全て足を運んだはずだ。

 こんなにお利口そうな子供の名前を、手帳に書き漏らしていたなんて。

 そう思って首を傾げた私だったが、いつのまにか彼女の体が菫色にボンヤリ光っているのに気付いて、ようやく合点がいった。


「ごめんごめん、お嬢さん。私とした事がついウッカリだ」

 私は笑って彼女に頭を下げる。

 職務怠慢な天使たちめ。

 こんなに小さな子供に気付かず、何日も地上に放っておくとは。

 彼女がどんなに良い子でも、『お召し』に上がった子供の名前なら、手帳から漏れていても仕方が無い。


「お詫びと言っては何だけど、私の家まで招待しよう。おもちゃ工房にはまだ沢山ストックがあるから、好きなプレゼントを選ぶといい」

 私は呼び鈴を振りながら、彼女にそう持ち掛ける。

 天使たちが迎えに来るまで、彼女は我が家で預かっておこう。家内も喜ぶだろう。


「本当に!?」

 彼女の貌が、パッと明るくなった。


「だったら私も、来年は一緒にプレゼントを運びたい! いいでしょ!」

 それも悪くない考えだ。

 そうこうする内に、シャンシャンシャン。

 空から鈴の音。部下のトナカイ達が、ソリを引いて私達を迎えに来た。

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