子供の頃に『僕が創った最強のキャラクター』というものを妄想したことはないだろうか。
皆、一度や二度とくらいは、思い出すと恥ずかしくて身悶えるような自分だけのキャラクターを創ったことがあるはずだ。
主人公の新堂新は、子供の頃に自分だけの可愛いくて最強のヒロインを創り上げ、ただひたすらに妄想し、妄想し、妄想しーーーーそしてある日突然、そのヒロインが新を愛し愛されるためにやって来た、現実に。
読んでいくと、自分が生み出した物語やそのキャラクターが世界図書館に登録されてないかなぁ、とウキウキする。自分が書いた物語を嫌いになんてならないよ、大切な大切な黒歴史だから……。
強いメッセージを感じます。
キャラクターを生み出したら、本当に出てきてしまった。
これだけでフィクションとして十分に楽しめる題材です。
しかしながら、読み進めているうちにそのメッセージにふと気がつき、読了後には感動さえ覚えていました。
物語は生きている。
それは作者が生み出したから。
そんなメッセージを感じます。
これは現実であっても、何ひとつ変わらない真理なのではないでしょうか。
作者が生み出した物語は、たとえどこにも出さずとも生きていて、命が宿っている。
生み出した作者が興味を失ってしまえば、物語はそこで砂のように消滅してしまう、と。
この世界に散らばるすべての物語は、命をもって生まれてきたのだと。
私も曲がりなりに物語を書いています。
だからこそそのように感じ入ったのかもしれません。
自分の生み出した物語を、自分の愛した物語を大切に。
そして間違っても、自分の物語を「嫌いだ」と言ってしまわないように。
そんな薫陶を与えてくれる作品であり、間違いなく生きている物語でした。
物語を書かれる方も、そうでない方も、是非一度この作品の息吹に触れてみてください。