プロの造形作家と、造形作家を目指す女の子、そして歴史を勉強中の男の子。この三人の配置が絶妙です。
構図としては、明智小五郎や金田一耕助がドラマ終盤で殺人事件の謎解きをする感じです。但し、謎解き役が造形作家なので、ぶっ飛んでいるものの、リアルで辻褄の取れたシナリオが開陳されます。プラトンの”対話篇”の如く、師匠と弟子の問答形式で物語が進むので、読者が置いてきぼりを食う事はありません。
個人的には、造形作家のジェノサイド説には賛同しません。まぁ、「先祖がヒトラーのナチス集団みたいだったはずがない」と、否定したがっている自分がいます。私なりのストーリー構築は途上なんですが...。
なお、歴史物ではありますが、付録的にフィギュア造形の世界も垣間見られるので、少しお得です。
造形屋(原型師)平城が造ろうとしている、スサノオのアイデア。
歴史学科の学生、健吾は、そのあり得なさに呆れるが……?
第00話だけ読んだら、「何言ってんだこの人」と思います。
健吾も、文献史的な立場で、常識的に突っ込みを入れてくれます。
しかし、次から次へと繰り広げられる平城の話を聞いているうちに。
そうだという証拠はない、でも、そうでないという証拠もない。
一貫して筋は通っている。
何より、そうだったら面白い。
純粋に学問的にはそれだけじゃマズいのかもしれませんが、歴史の隙間を想像するのってこんなに楽しいんだ、と感じさせてくれます。
終わり近くの章、ズームアウトで地図が一気に広がっていく感じには、「おおっ」と全身が沸き立ちます。
面白かった!
奈良や出雲に行ってみたくなりますね。