エピローグ

 物語を読み終えた感想。

 それは駄作。

 だって告白も何もしないで自分の中に思いを閉じ込めてモヤモヤっとして、物語が終わってしまうのだから。

 只、長々と物語を通じて主人公がヒロインに特別な感情を抱いていた事に気づくだけ。

 量は多いけれど甘くないケーキの様なもの。

 ただ、それだけの物語。

 冗長。

 文字数の無駄遣い。

 言い方は色々あるけれど。


「おかしいなぁ……」


 なのに。

 なのに……どうして、こんなに。


「涙が……溢れて止まらないんだろ」


 目頭からいくつもの滴がスマホの画面に落ちては弾ける。

 駄作なのに。

 駄作なはずなのに。


 ――僕は、君に……恋してたんだ。


 その文を読んだ途端に涙が溢れて止まらなかった。


「流石、先輩です。もう、夢を一つ叶えちゃったじゃないですか。先輩の小説で、こんなに……こんなにも感動してる人が居るんですよ?」


 駄作。

 だけど最高の駄作。

 きっとこの物語に感動して泣く人間なんて世界であたしだけしかいない。

 だから一つ、明らかにこの物語に足りないものがあるとするならば、それは――


「あたしも……あたしも先輩に恋してましたっ」


 それがヒロインからの返事。




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最高の駄作 黒田灰猫 @kurodahaineko

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