第4話 響詩郎と雷奈(後編・下の巻)
「
「ど、どうしてここに?」
「あなたに会いに来たのよ。
僧侶の顔は先ほどまでと同様に憤怒の色に染まっていた。
「おい小娘。いきなり坊主を背中から足蹴にしやがって、だいぶお行儀が悪いんじゃないのか」
だが僧侶の怒りの声もどこ吹く風といったように
「黙りなさい。ナマグサ坊主。あなたの耳障りな説法にはヘドが出るわ」
これには僧侶も面食らった様子で目を丸くした。
「ほう。こりゃまた豪気なお嬢ちゃんだ。しかし最近の若い奴は口の聞き方を知らんのか? 教育してやらんとな」
そう言うと僧侶は大股で
それを見た
「あ、あんた。首つっこむなって。これは俺の仕事……」
「黙って見てなさい。それからいい加減、あんたって呼び方やめてよね。私には
一切の反論を認めない調子できっぱりとそう言うと、
2人は1メートルにも満たない距離を挟んで対峙した。
「俺が女を殴らないと思ってんのか?」
そう言って
「笑わせないで。そんなジェントルマンには到底見えないわよ」
互いにそう言葉の応酬をしたほんの一瞬後だった。
「なっ……」
驚きの声を上げたのは
あまりにも
(あ、あいつ。
すぐさま起き上がった僧侶だったが、
「……ケンカ慣れしてるようだな」
そう言う僧侶を
「有段者だから。あなたを一方的に叩きのめすくらいワケないわ。さっきあなたが
「ほざきやがって!」
まだ小娘と侮っていた相手に機先を制された僧侶は、本気で相手を制圧するつもりで
だが僧侶が繰り出す拳の一撃をギリギリでかいくぐり、
「ぐっ!」
僧侶は息が詰まり、苦しげな声を上げて尻餅をついた。
これには僧侶も目を白黒させる。
すぐに起き上がろうとするが、体が思った以上のダメージを受けていて足に力が入らない。
「く、くそっ!」
筋力も腕の長さも相手よりも上であるはずの自分が、なぜこうまで圧倒されるのか。
僧侶は怒りと焦りのあまり冷静さを失っていた。
力学に
「立ちなさいよ。威勢のいいのは口だけかしら?」
そう言うと
挑発的な行為だったが、その顔には油断も慢心もなかった。
「くそったれがぁ!」
僧侶は怒声を上げて立ち上がると、
だが
「危ない!」
だが、僧侶が
「おげっ!」
僧侶は背中を強打してそのまま起き上がれなくなる。
そんな僧侶を見下ろして
「さっき負け犬はすっこんでろとか言ってたわよね? だったらあなたがすっこんでなさい」
気持ちいいくらいの
そんな彼を
「なにボサッとしてんのよ。サッサと自分の仕事を……」
そう言いかけた
そこには膝をガクガクと震わせて、それでも立ち上がる僧侶の姿があった。
「て、てめえ。絶対に許さねえ。どこの誰だか知らねえが、どこまでも追いかけて必ず後悔させてやる」
さながら復讐鬼のような形相で執念深い恨み言を口にする僧侶の手には刃渡り15センチほどのナイフが握られていた。
「やばいぞ。
それを見た
「ダサッ……護身用にそんなの隠し持って歩いてたの? よほど自分の腕に自信がないのね」
小馬鹿にしたような
「殺してやる! 後悔しやがれぇぇぇ!」
僧侶の握り締めた凶刃が
だが、
「ナメんなぁ!」
そして左の拳で僧侶の手首を砕いてナイフを叩き落とすと、右の拳で僧侶の
「あぐうっ!」
手首の骨を砕かれ、さらには鋭い衝撃が
それで勝負は決した。
「ナマグサ坊主。私は鬼ヶ崎
それを聞いた僧侶の顔色が変わった。
「お、鬼ヶ崎? ま、まさか……」
僧侶は
神道業界の中でもきっての武闘派集団で、鬼を信奉する神社の一族の名が鬼ヶ崎であることは僧侶も知っていた。
「私は逃げも隠れもしないから、文句があるならいつでも鬼留神社に来なさい。何度でもぶっ飛ばしてあげる」
その言葉を聞き終わらないうちに僧侶は
それを見届けると
「
彼女の言う通りだった。
「桃先生の提案を飲んでくれるのか?」
そう尋ねる
「ええ。私もあなたの力が必要だから。私たちが組んだら、ちょっと面白いと思わない?」
微笑を浮かべてそう言うと、
「……そうだな。よろしく頼む」
そう言うと
漆黒の鬼を駆使する大鬼
不気味な
互いの弱点を補い合う2人の出会いは、化学反応となって
これはほんの序章に過ぎない。
2人が大きな事件に巻き込まれていくのは、これよりも少し先のことだった。
【第1部 完】
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*本編はこちら
『オニカノ・スプラッシュアウト!』
オニカノZERO! 枕崎 純之助 @JYSY
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