第3話 響詩郎と雷奈(後編・上の巻)
「まあそう怖がるなよ。知っていることを洗いざらい喋ってくれるだけでいいんだ。簡単なことさ」
そう言うと僧侶は拳をボキボキと鳴らしながらズカズカと大股で妖魔の男に近付いていく。
「ひいっ!」
妖魔の男は怯えきって立ち尽くしていたが、僧侶の前に
「またあんたか。悪いが彼は俺のクライアントだ。あんたの出る幕はない」
そう言う
「
まったく悪びれる様子もなくそう言いながら僧侶は
だが
「あんたにモラルを求めるだけ無駄だろうが、人の仕事をこんなやり方で横取りしてると、ますます評判落として仕事がやりづらくなるだけだぜ」
毅然とした態度で
鋭い視線を
「おめえ馬鹿だろ。普通の奴は殴られたら学習するもんだぜ。強い奴には逆らうべきじゃないってな。この前の痛みを忘れちまったか? ああっ?」
そう言うと僧侶は筋骨隆々たる腕を振りかざし、握り拳を
その拳は
「強い奴? あんたみたいに腕力に任せて自分より弱い奴を押さえつけるしか能のない奴は強いとは言わねえんだよ」
彼の目の前で寸止めされていた僧侶の拳がパッと開かれ、
そして僧侶はもう片方の拳で容赦なく
「かはっ!」
硬い拳がめり込んだ腹部に猛烈な激痛が走り、
僧侶はそんな
「なら教えてくれよ。どんな奴が強いんだ? ああっ?」
怒声を上げて僧侶は
「ぐっ! うぐっ!」
幾度か蹴りつけて
「ケッ。てめえは弱いから自分の客も仕事も守れない。どんなにご大層なゴタク並べようとそれが現実だ」
そう言うと僧侶は妖魔の男に迫っていく。
男は
そんな彼に対して僧侶はその太い二の腕を伸ばす。
「さあ選手交代だ。あんたの面倒は俺が見てやる……」
そう言いかけた僧侶だったが、倒れていた
再び眼前に立ちはだかる
「てめえ。本当に半殺しにされなきゃ分からねえようだな」
僧侶は殺気で目をギラつかせてそう
腹に強烈なパンチをもらったことで膝はガクガクと震えていたが、それでも
「何度も言わせるな。これは俺の仕事だ。頼ってくれた依頼主を放り出すわけにはいかないんだよ」
そう言い張る
「フンッ。馬鹿が。そんなクソ犯罪者を
僧侶は再び
「しつこいんだよ! このガキが!」
僧侶は自分に食らいついてくる
「あぐっ!」
アスファルトの上に転がって苦痛の声を上げる
「オラッ。そこでウジ虫みたいに這いつくばってろ。てめえは負けたんだ。負け犬はすっこめ」
そう言うと僧侶は今度こそ妖魔の男を捕らえようと歩を進めた。
だが、そこで足首を
「っく」
僧侶の足首を
彼は地面に這いつくばったまま、それでも僧侶の行く手を阻もうと必死に手を伸ばして足首をつかまえたのだ。
だが、これは僧侶の怒りのリミッターを外す行為となってしまった。
「そうか。もう命は惜しくねえってか。すげえなおまえ。根性あるぜ。なら望み通り殺してやる」
そう言った僧侶の口調は奇妙にもやさしげだったが、その目はもはや血走り据わっていた。
そしてうつ伏せの
「うぐっ!」
大柄な僧侶に乗っかられて、強い圧迫感が
苦しげに声を
分厚い手で張られて
そんな彼の顔を見下ろしながら僧侶は事も無げに言った。
「幸いあの妖魔野郎はビビって逃げられねえみたいだから、おまえを死体に変えた後、ゆっくり捕まえてやるよ」
僧侶の口調こそ穏やかだが、その目は完全にキレていた。
僧侶は拳を振り上げると容赦なく
「オラッ! オラッ! 死ねっ! 死んじまえっ!」
ゴッ、ゴッと鈍い音が頭の中に響き、
もはや理性を失った僧侶は本当に自分を殺すまで止まらないだろうと
だが、事態が彼の予想し得ない方向に転がり始めたのはその直後だった。
「うおっ!」
突然、僧侶が声を上げて
腹部を圧迫していた重しが消え、
頭がクラクラして視界がぼやけている。
殴られた痛みが全身を苛んでいたが焦点が定まってくると彼は思わず息を飲んだ。
その人物を見上げて
「あ、あんたは……」
彼の前に立っていたのはつい先日、
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『オニカノ・スプラッシュアウト!』
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