第3話 懸命に

夢を見た。 友達の花音や両親達の夢だ。

夢の中の私は、必死にみんなに話しかけていた。

だけど、いくら話しかけても誰も気付いてくれないのだ。

私は、声を大きくして叫んだ。

私はここに居るのに! どうして気付かないの…

涙が止めどなく溢れてくる。 何度目かの叫び声で、目が覚めた。

ここはどこ… 一瞬考えたが、自分が異世界に来てしまった事を思い出した。

夢じゃないのね… それにしても、嫌な夢だったわ。

ここで生きて行く為には働かなくっちゃ

桶に水を入れて顔を洗い、仕事着に着替えた。

マリーさんが、朝食に誘いに来たので、一緒に食堂に行った。

たくさんの人達が食事をとっていた。

私の隣りの席に座った、同じ職場のソニアさんと話しが合い仲良くなった。

ソニアさんは、私より三歳年上で頼りになるお姉さんだ。

彼女は、この街のオーガスの商人の娘で、生活に不自由はないのだが、行儀見習いの為にオーガス城に半年前から働きに来たのだそうだ。

どうやらこの国には、貴族階級があるらしい。


朝食が終わり、マリーさんから空いている部屋で、部屋への入室の仕方やお茶の出し方やテーブルマナーの三つを習った。


さすがに今日は疲れた。

慣れない事をしたせいか、腕や腰が痛い。

寝ようと思いベットに入ったが、眠れず少し散歩をしようと外に出た。

庭のベンチに座っていると、ガサガサと音がして人が現われた。

一瞬驚いたが、クヒルさんだったのでホッとした。と、同時に彼が何者かが気になった。

私は思わず、「クヒルさん」と、声をかけた。

すると、私に気付いてこちらにクヒルさんがやって来た。

「やあ! ユリナじゃないか! こんな時間にどうしたんだい⁉︎」

「こんばんは! 昨日は親切にしていただいてありがとうございます。」

「なんだか眠れなくて、散歩に出て来たんです。」

「そうか… 知らない世界で一人っきりだからなぁ…」

「あの… クヒルさんはお城で何のお仕事についてるんですか⁉︎」

「…」

「あの… 聞いちゃダメでしたか⁉︎」

「いや、大丈夫だよ。 俺はここで、皇子の護衛や市民の暮らしを見て、皇子の目と耳の役割りをしているんだ。」

「それは大変なお仕事ですね!」

「俺の事より、君の事を聞きたいな⁉︎」

ん… はぐらかされた?

まあ、いいわ。

「私は、日本という国で生まれて、高校に通っている、ただの女子高生でした。」

「高校とは何をする所⁉︎」

「高校は、勉強を学ぶ場所です。 高校に入る前は、小学校が六年間と中学校が三年間の義務教育で、どの子供も学校に通うんです。」

「教育がしっかりしているんだなぁ」

「オーガスでは、学校はないんですか⁉︎」

「あるけど、学校に行けるのは、裕福な家の子供達だけだよ… それに、更に裕福だと家庭教師を雇うから家で習うんだ。」

「そうなんですね…」

くっしょん…

「冷えたかい? もう部屋に戻った方がいい。 ゆっくり休んで。 お休み」

「お休みなさい」

もっと話したかったけど、明日にひびくとダメよね…

さあ、眠ろう…


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恋から… 逃げきるのは大変⁉︎ サチヤ @sachiya040507

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