僕は、いかにして訴追されたか。

 ばあちゃんがトイレを流してる音を聞いて、僕は安心した。配管自動バイパス装置は問題なく作動してすべてのライフラインの配管がもとに戻ったようだ。

 僕は、崩れるようにして勉強机の椅子から落ち、ベッドではなく万年床の布団に入り込んだ。

 信じられないくらい長くて短い夜だった。


 2時間丸々、完全に熟睡したところで、僕は、ふすまの向こうからする母親の声に起こされた。

 「警察の人が来てるよ」

 

 えっ。僕は、その朝二度驚いた。一度は、母の声に、もう一度は、時計を見て二時間してっていないことに。


 そんなはずは、ない。もちろん、辻々に防犯カメラのあるこの最近のご時世だ。捜査線上に僕の名前が上がったり、いや、この家が上がることはあっても、それは、数週間後もしくは、数日後、いや、少なくとも、半日ぐらいは、猶予ゆうよがあるはずだ。

 どうやって、二時間で県警はこの家にたどり着いたのだ。こっちが聞きたいぐらいだった。

 そして、その朝、三度目の驚きが僕を待っていた。

 僕の部屋は、北向きで、家の間取りに対しては裏側に当たる、兄貴共々、裏側の部屋をあてがわれている。

 静かな環境で勉強に専念して欲しいという両親のありがたい計らいだ。

 ところが、僕の部屋の窓からは、表の人が集まった往来が見え、サイレンこそ鳴らしていないものの、回転灯をグルグル回しっぱなしのパトカーが数台、僕の家の前に停車していた。

 

 あれ?。

 

 僕の家は、緊急脱出装置の固形燃料で高度3000メートルに打ち上げられた後GPSできっちり誘導され、元の位置に寸分たがわず、家の基礎、土台に着地したはずだったが、なんと、裏表真逆に着地していたのである。

 家の基礎はきっちりした長方形なのだが、家には、ウラとオモテがあるのだ。

 そして、全配管はそのままきちっと、問題なく接続。

 しまった。僕は思わぬところで、ミスをしてしまった。

 後から、聞いた話によると、新聞を取りに行った母親が幾度か、玄関から出るも、裏庭に出てしまうという、一人トワイライトゾーンを繰り返した後、ついに近所中に聞こえる悲鳴をあげ、

「誰かぁー助けてくださぁーい」と大声を張り上げたそうなのだ。

 前田利家ではないが、さもありなん、さもありなん。

 するとまさにお隣さんや、向かいの方々がやってきて、県警に即通報。

 家が裏表に建っているだけで、あっという間に特定されてしまったのだ。

 

 なんと。

 

 僕は、母親に呼ばれてそのまま拒むこともなく玄関までいくと、そこには、フル装備の機動隊が6名と二人の私服刑事がうちの狭い玄関にぎゅうぎゅう詰めになって立っていた。

「道路交通法違反の容疑で逮捕します」

 背の高い、ウィンドブレイカーを着た方の刑事がそう言って、逮捕状を見せると、僕は逮捕された。

 道路交通法違反!?。これも、言われてみるとそうなのだが、法定上無許可の車両、とりあえず、車両だと県警は判断したらしい、BOKUの偏向式プロパンガス・ロケットで道路を走っているのだけは、防犯カメラの確認することなく田崎の家の前でチキンランしたパトカーの警察官にしっかり確認されているのでこういうことになったらしい。

 

 僕は中学生の少年だから、ブルーシートで保護されてなんて思っていたが、なんにもなかった。あれは、マスコミが来ているときだけに適用される措置らしかった。そして逮捕された僕を6名の機動隊がそれこそ前後左右を囲み、連行した。なぜなら僕は家そのものを凶器に改造し街中を暴れまくった重犯罪者なのだ。

 母親か父親が泣きすがりながら、連行される僕を止めるかと思ったが、母親は髪の毛はぼさぼさで何度玄関から出ても、郵便ポストにたどれり着けない症候群に陥って以来精神的におかしくなっているようだった。 

 ばあちゃんも、家の裏表関係が逆になっていることから、自分がボケ始めたと感じ、もう一度床に入っていて大昔から行っているもう一回睡眠してみて様子を見るという治療法を行っていた。父親はどうやら昨晩相当お茶を飲んだらしくお茶を摂取した量に比例して睡眠薬を摂取することになるので、まだ寝ていた。

 夜更かし大好きの兄貴も朝は極端によわい。ついでに行っておくと犬のジョンは自分が対処できない事態に対しては、吠えもせず、自分の陣地である犬小屋を死守するように出来ている。


 僕は、犯罪者になってしまった。


 人生でパトカーに乗ったのは始めてだったのだが、パトカーの扉がしまった瞬間にそう思った。

 一般的に、重犯罪者は護送される時、どうなるのか、知らないので警察署に着くまで、どういった行程を経るのか、不明だったが、どういったわけか、マスコミ、一切居なかった。

 朝が早いからかなとか、当時は思っていたのだが、恐ろしいことにもう既に官邸が動いていたのだ。

 各大手から準大手、雑誌、出版にいたるありとあらゆるマスコミのお偉いさんを呼んで箝口令を敷いていたそうだ。そして、総務省はすべての動画から画像共有サイト、掲示板サイト、各種SNSシステム、そこに上げられたBOKUのすべての情報を潰しにかかった。

 あとで、防衛省か、文科省の技官が言ってたところによると、一兆個単位のタグを予想検索タグとして登録し、無作為に削除しまくったそうだ。

 しつこくアップロードする特定のユーザーに対しては偽の通信速度制限までプロバイダーから利用者に強いて通信をシャッタウトしたらしい。

 僕が、連行された警察署は、あの自衛隊の治安出動を切腹覚悟で要請した署長がいる警察署(犯罪が起きた当該地域の所轄としては、そこになる)ではなく、県庁がある街中の県警本部に直接連行された。

 そして、留置に際し行われる、ありとあらゆる手間、行程、作業を一切省き、取調べが始まった。

 

 僕は二時間しか寝ていないにもかかわらず、刑事が、二時間交代で、尋問者と記録者、合計、何組来たのか覚えていないけど、あっ、この人、二回目だな、とか、思っていると、夜になっていた。

 県警が急いでいるいや、焦っていることだけは、確かだった。


 これが、公的機関と権力、もしくは法の向こうサイドの対応。


 そして僕は、それこそ、ありとあらゆる罪を着せられることになる。

 

 で、僕はというと、眠いということ以外を除けば、一市民として捜査には、全面に協力した。

 なぜなら、僕は、第一章でも書いたが、マッドサインティストでも、ソシオパスでもない、僕は、田崎を除き、この地域で近隣の住民とともに一緒に住んでいるということを、僕は受け入れる。それが法治国家である日本人という名の市民というものならその市民の考えはすべからく尊重もしよう。

 強烈な努力の結果、記憶が曖昧なところだけは、喋りようがないので、喋れなかったけど。

 で、一番おもしろかったのは、県警の捜査官が次々とありとあらゆる逮捕状を持ってきたこと、、。

「警部、今裁判所から、何々が出ました」これが三回ぐらい続くと

「警部補、今、官邸から電話が入りました」が、大体一回登場するぐらいの割り合い。裁判所からの三に対し、官邸から一の割合。

 これが、政府のレシオ。

 県警は地裁と官邸との板挟みになっているみたい。ただ、逮捕状だけは、どんどん取り調べに使用されている傷だらけの事務机に積み上げられていく。

 まぁ、僕の場合、多分日本で始めて自衛隊と交戦した日本人で特殊なわけだけど、中学生なので、よくわからないけど、なんか法治主義では、一つの犯罪を二つ以上のの罪で裁いてはいけないっていうルールがあるらしんだけど、このへんは、社会でも習わなかったような、、。

 まず最初は、道路交通法違反。

 これで、家から県警本部に連行された。

 車両かと言われれば、車両だけど、BOKUの足についているのは、スーパーのカートですよ。と何度も説明したんだけど、ほら、子供が、スーパーからちょっと離れた駐車場までシャーって走ってることあるじゃん、それを例に出して抗弁し自己弁護したんだけどダメでした。

 県警は「こういった車両での道路の走行は認められていない」の一点張りなのだ。

 土台、BOKUは家で車両じゃないと思うのだけど、、。

 医師法違反。

 医師免許や薬剤師免許のない僕が、処方薬の睡眠薬をお茶のやかんにいれたことをさすらしいけど、これを医師法違反とか言うと、家族で介護できないじゃん。

 僕は、既に医師から処方されたあとの薬品を家族に介護し、飲ませただけだ。

 責任は、処方した医師に存在する。

 これも、頑張って抗弁したけど、

「誘拐犯も同じことを言う」

 の一点張りだった。

 拉致監禁。

 無理やり強いている場合は僕も認めるけど、、お茶に睡眠薬を入れただけなのに、、。

 これも、。

「誘拐犯もそういう」犯罪を取り締まるプロによるとそういうことになるらしいのだ。

 家族を眠らして家そのものが移動すると、すごい犯罪になるらしい。家を移動すること計画中のみなさん、気をつけましょう。

 共謀罪。

 ヤバい、まりえちゃんに掃除の時間に声をかけたのが、これに該当するらしい。ここからは、黙秘だな。まりえちゃんに累が及ぶのだけはなんとしても避けなければならない、、。

 暴力行為等処罰法違反。

 まぁ、これは、 、認めます。

 器物損壊。

 これも、認めます。田崎の家に窓ガラスを割って閃光弾を遅発セットで二発と催涙弾をBOKUでぶち込んだので。でも、刑事同士がごにょごにょ話してるの聞こえたのだけど、田崎家から被害届けは直接でてないらしいんだよね、、。

 傷害罪。

 これは、断固として無罪を主張したい。だって田崎家からは誰も出てこなかったのだもん。どうやら、このあと、あった警察官とのチキンランも関係しているらしいことがぼそっと一人の刑事の口から漏れました。そうだ、パトカー二台をひっくり返したんだ。でも、ここからは、犯罪者とはいえ、緊急時における正当防衛も主張したい。違法行為を行っている間はダメか、、。

 威力業務妨害。

 夜で、誰も業務してないじゃないと思うんだけど、まりえちゃんでパパさまを驚かせたことと田崎家へ閃光弾と催涙弾を投げ込んだことが次の日の二人の父親の業務にさしつかえるそうなんだよね、、。これって、ちょっと過剰な法の適応だろう!。だんだん怒ってきた僕。

 ここから罪状がシリアルになってきます。

 殺人未遂。

 田崎家を出てからは申し開きが出来ない。

 殺人ならびに死体遺棄。

 BOKUで陸自の弾着観測班を蹴り飛ばしたことが遺棄にもあたるとひげの刑事さん。

 そうですか、、、。あの土砂ごと掘り返して蹴り飛ばした時に国のために働く立派な自衛隊の方が何人ぐらい巻き込まれたのか、怖くて訊けない。

 危険物取扱法違反。

 多分、BOKUの緊急脱出装置の固形燃料の事を言っているんだと思ってたら、違った、プロパンガスを噴射してローラースケートしたことか!?。

 航空法違反。

 BOKUは、打ち上がっただけで、飛んではいません刑事さん。信じてくださいよ刑事さん。

 電波法違反。

 GPSだな、、おそらく。

 そして、警察に絡み関係する限り、全てに適用可能な、オールパーパスで、オールマイティな、罪名、務執行妨害。

 パトカーとのチキンランかな、、やっぱ。

 

 何日目の取り調べだったのだろう。取り調べがこんなに疲れるものだと全く知らなかった。向こうは二時間交代で、何組か居るけど、僕は、一人だ。県警本部の取調室でも一人、

BOKUのコックピットでも一人、いじめられているときも一人、地球でも一人。

 ある時、僕は、いったいどうなるんだ、、。そう思って、股の間の取調室のパイプ椅子のへりを見つめたとき、

 一人の制服の警察官がものすごいスピードで取調室に入ってきて、担当の体育教師みたいな刑事さんに耳打ち、ごにょごにょ。それも、今までのごにょごにょよりちょい長め。

 途端、体育教師みたいな刑事さんの表情が阿修羅像みたいな顔になった。日本史で習ったけど、運慶だったっけ、快慶!?。

「付いて来い」声は小さいが、完全に怒っている声だった。

 僕は、ベルトのないズボンを片手で押さえ腰縄でついていく。フード付きのダークブルーのポンチョみたいな上着を着せられ、護送車へ、よくここで、顔を撮られてニュースに載るやつだ。でも僕は少年だから、、とか思っていると、ところがブルーシートがない。

 どうやら、留置されている間に刑法と少年法が国会で大きく改正されたらしい。

 世間はそうかんたんには忘れてくれないだろう。家に乗って陸上自衛隊と戦闘した奴を。

 一生指さされて生きるのか、、。そう思っていると、県警本部のへいの隙間からのマスコミのフラッシュもない。

 うん?。

 大量の警察官に四方八方を囲まれ、促されてカーテン付きの大型の護送車へ。

 なんと一人だ。

 僕一人にこんな大型の護送車で、、と思っていると。黒い布袋が被せられ目隠しになった。

 なんで、目隠しされるんだ。

 どうやらこれまた留置されている間に、大量の刑法を含む、法制度改革が国会では行われたようだ。 裁判をずに、もう刑が執行されるらしい。

 法務省のヤツバラめ、、、。

 と最初思ったが、突然恐怖が襲ってきた。別に僕は、閉所恐怖症でも暗闇恐怖症でもない。

 上手く書けないけど、例えようのない恐怖だ。

 僕は、黒い布袋を掛けられたまま、泣き叫んだ。

「取り押さえろ」

「舌を噛む気だぞ、棒を噛ませろ」

 護送用のバスに同乗していた5,6人の大男の警察官が力の限り僕を取り押さえた。

 取り押さえられながら、僕は、思ったこれは、むくいなんだ。

 僕がひっくり返したパトカーに乗車していた警察官もおそらく、ひっくり返されるときはものすごく怖かったはずだし、上記では触れなかったけど、AH-1Sコブラのパイロットもたぶん殺してる、落ちる時ものすごく怖かったはずだ。

 しかし、そんな考えは、なんの助けにもならなかった。僕は、暴れ、悲鳴を上げ続けた。

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