僕は、いかにして世界を征服しようとしているのか?

美作為朝

僕が、いかにしてそれを製作することになったか。

僕はこれから重要なことを告白しここに書き記そうとしている。

 書き記すのは、とても重要な事だからだ。

 そして、これらを書き記す行為は、その媒体が紙にしろ、電磁器媒体にしろ、国家レベルで厳しく禁じられている。

 それを犯してまで僕は、これを書いている。これからこの散文を読むあなたはこのことを十分に留意して読んで欲しい。


 僕の中学校生活は大体トイレに結びついてる。教室から、トイレ、トイレから教室。これだけ書けば大体理解してもらえると思う。


 僕は、ただ、強くなりたかった。ただそれでけだった。

 そんなの理由なんてわかるでしょう。

 僕が生き辛いのは、僕より、強いやつがいっぱいいるからだ。

 腕立て伏せをする、そんなんじゃダメだ。

 バーベルを買う、高そうだ、それも駄目。

 プロテインを飲む、まぁ良いかもしれない。

 格闘技を習う?これもよさそうだが、強くなる前にそこの師範にボコボコにされそうだ。

 自衛隊に入る?いいかもしれない、国家や社会や地域に貢献できて、鍛えてもくれる。でもダメだ。多分訓練に耐えられない。それにいざという時の覚悟がない。自衛隊って死ななきゃいけないんでしょ。

 サイボーグになる。多分医師法違反で、どの医者も協力してくれない。それに多分保険適用外の治療になるんじゃないかな。

 

 やっぱ駄目か、そう思ったときに気付いたんだよね。

 簡単に強くなる方法なんてないって。


 でも、それが解決策だったわけ。

 なにも僕が強くなれないんじゃならなくても、いいわけで。

 そうなんだ、寒さや暑さ雨露を凌ぐために素っ裸で頑張る必要て全くなくて、

家に住んでるじゃない。

 そうなんだ。


 もう俺って充分強いんじゃん。


 それから、毎日、僕は、寝ても覚めても、計画を考えに考えた。

食事時のみなさん、ごめんなさい。そうそれこそ、トイレのときなんて、最高のシンキングタイムだった。

 僕は、堀越二郎であり、Qであり、テム・レイであり、ヴィクター・フランケンシュタインだった。


 そう、この家の改造方法を。


 みなさん、考えて欲しい。人が持っている一番強度のある物を、

そりゃ決まっているだろう、考えるまでもない。


 家だ。

 

 風雪風雨に耐え、国の建築基準とかよく知らないけど、普通の揺れの地震には耐えてる。

 それにどうだ。

 もうあんまりいないけど野良犬に小さい頃襲われたら家に逃げ帰るだろう。

 いじめっ子にいじめられたら、家に泣きながら逃げ帰るだろう。

 テストで悪い点をとっても泣きながら家に帰るだろう、そしてテストはビリビリに破いてゴミ箱へ。(なるべく小さく破くことを推奨する、母親はゴミを管理して子供を管理している)

 ヤクザの人も抗争で家に、あっ事務所っていうのか、ダンプ突っ込まれたりしてるけど、逆にいえば、ダンプが突っ込んできても、中にさえいれば、平気なわけだ。

 抗争を生き残ってきた戦いのプロのヤクザの人達が頼っているんだから家は最強なんだ。

 そうそれに、おそらく怖がりの引きこもりの人も家にこもっているしね。


 家なんだ。


 家しかない。


 まずは、図面だ。だけど、もう堀越二郎さんとかみたいに製図台なんかに向かう時代は数十年前に終わった。

 僕は、なにもしてくれない親父の部屋に行き、或夜本棚から古いヴァージョン遅れのCADのソフトをゴソゴソ。

 親父は酒臭い寝息をあげながら、寝ている。うちの両親はいつからか知らないが、お互いの睡眠を尊重するタイプで寝室は別だ。これも家族関係にとって良くないんじゃないかと、映画でアメリカンナイズされている僕は考えている。

 インストールのときに、アクティベーションとか要求されるのかな、、なんて思っていたけど、なんとフリーだった。

 お兄ちゃんのお古の僕のPCにこれまら古いVerのCADが入った。

 いい感じだ。たぶんどっちか最新だったら、アウトだったに違いない。


 しかし、ここから行き詰った。


ジャパニメーションといって、日本のアニメはロボット物は一切海外では受けないらしい。それもそうだ。そんな到底無理だからだ。逆立ちしても無理だ。

 アニメの設定だと、古代文明のなんとかからとか、異星人の新しい技術でどうのとか、

何々博士の新開発のなんとかで、とか。

 これは、とても大事なことなので、声をじゃなかった、文字を大きくして書き記したい。


 絶対に無理だ。

 

 特ににロボットアニメを制作しているアニメ製作会社に向かって声を大にして言いたい。絶対無理だ。到底無理だ。脚本家や演出家は嘘つきだ。

 僕は、落ち込んだ。とういうよりそれこそロボットのように停止してしまった。毎日朝起きて学校にいったり、テレビを見たりしていたが、心のスイッチは完全に止まっていた。体はちょっと前に培った経験からそれをなぞって動いているだけ。目の前の出来事はパソコンのモニターのように空虚な画面でしか無かった。

 

 しかし、僕の予備回路はT-800のように動いていた。プロティンや腕立て伏せ、格闘技、自衛隊入隊を否定した僕が唯一残された道こそ、これではないのかと。

 僕は、ターミネーターのテーマ曲とともに蘇った。ダダンダンダダン♪。


 知らないことを知り、考え、調べなければいけないことも調べあげた。

 これを万人に理解できる言葉に置き換えるなら"努力"という言葉が一番適している。

 それこそ、努力という言葉は、まさにその時の僕そのものだった。それに僕は解決策も見つけていた。

 ロボットにこだわっていた僕が幼稚だったのかもしれない。モビルスーツがだめでも、モビルアーマがあるじゃないか。

 もとは、家じゃないか。なんで最終型がロボットでないといけないのだ。

 人とは自分で目標を決めているが同時に自分の枠を決めているものだ。愚かだ。

 このインターネットの世の中、家に居て何もかも調べられるが、、、。が、限界もある。

 時として、ママチャリに乗って町の中央図書館に27インチのタイヤを転がしえんやこらこいで行った。

 僕は図書館に27インチを転がして行き、山ほどの本とともにコピーを持ち帰り部屋に籠もった。

 家族は僕が来るべき高校受験に向けて勉強していると思い喜んだが、当然違った。僕は家を最強にすべく、努力していたのであって、勉強なんかしていない。

 当然、成績は急降下した。

 教科担当がメリーゴーランドの馬のように順繰りにやってきてやんわりと警告したのち改善が見られないと泣き叫び、次に担任がジェットコースターのようにやや厳しく警告したあと改善が見られないと更に泣き叫び、次に両親が遊園地のチケットのように小遣いの金額とバーター(どうしてその二つがバーターになるのか未だに僕にはわからない)だと警告したあと改善が見られないと大いに泣き叫んだ。

 そんな、泣き声など、少し前の挫折に比べれば、雑音にしか過ぎなかった。

 気にする必要は一切ない。

 事が成し遂げられたら、全て解決するのだ。成し遂げられたらだけど、、。


 実は、この辺りから、僕の記憶は、ぼんやりと曖昧になってくる。 

 書かなくてもわかってもらえるだろう。

 そう、それぐらい努力していたのだ。

 気がついたら、二日ぐらい起き続けているときもあったし、その後、三日ぐらい寝続けたこともあった。もちろん法に触れるような薬物は使用していないことをここに書き記しておきたい。あとで書くつもりだが逮捕後の各種警察の薬物検査は全てクリアしている。

 僕のお古のPCのCADソフトのファイル、.DW2、DW3.、DWG.は数え切れないぐらい何度も上書きされ、数え切れないぐらい幾つものファイルが出来上がった。

 おそらくこれをお読みの皆さんは知らないだろう、人が努力したらどんなことが成し遂げられるかということを。

 本当の努力をしたことがないだろうから、理解できないはずだ。

 本当の努力というものは、言語化がまず不可能だ。残念なことなのだが、つまりここになにがあったか書けないのだ。

 僕は県警で幾度も尋問を受けたが、自分でもわからないのだから説明のしようがない。

「それは黙秘権か?」と何度も訊かれたが、どこをどう解釈すれば黙秘権になるのかすら理解できなかった。

 

 設計は終わった。


 しかし、ここで、また僕は行き詰まった。


 このDW2.、DW3.DWG.をどうすれば、実現できる?。


 大変悪いが、これも又、大変重要なことなので、後世に書き記すためにも声を大きくじゃなかった、文字を大きくして記したい。


 絶対無理だ。


 人というものは恐ろしいもので目的を強烈に認識するあまり、資材または物質、物体を手に入れるということを僕は全く考慮しないで設計していたのだ。

 つまりこのままでは究極の机上の空論に終わってしまうというところだった。

 それに気付いた瞬間、僕は己の愚かさに笑い声を上げて笑った。それこそシャアみたいに。

 家族はそれこそ、母から、犬のジョンに至るまで、僕が狂ったと思った思う。

 それが常識人の判断なら、僕は受け入れる。それが家族というものなら尊重もしよう。


 しかし、僕はめげなかった。


 あのテーマ曲が聞こえる限り、ダダンダンダダン♪。


 アニメの中で国境線を争う紛争が始まった中、戦闘中に宇宙まで行った一見すると冴えないシロツグ・ラーダットが僕に語りかけていた。

「ここで、、、」辞めよう著作権法違反になる。

 僕はありとあらゆる手段を使って必要な物資、材料、物体を手に入れることにした。そして大概の場合日本の国内法に触れる場合はどうするとかいう認識が完全に欠落していた。

 今から思えば、このへんが分水嶺でターニングポイントだったかもしれない。

 27インチの細身の米国式バルブのタイヤを転がし、ホームセンターへ。みなさんはご存じないだろう、ホームセンターは大工やちょっとした業者であるプロも利用していて、なんでも手に入る。

 そしてその材料を使えば金額によると小規模だが大量破壊兵器も作ることが出来る。

 何より力を発揮したのは、ネットオークションだった。

 日本語で検索しているうちは一億人強しか相手にしていないことになる。英語をブレイクスルーしたことが一番大きかった。

 ユニバーサルラングエイジの英語で検索するとほぼ45億人の世界中から物を集められるのだ、それも驚くほど適正な価格で。


 僕はありとあらゆるものを手に入れると、一部は自分の部屋に入れ、一部は、犬小屋へ入れ、一部は家族が寝静まってから納屋に入れ、一部は丁寧に偽装して冷蔵庫へ入れた。

 すべては、ナイス&スムージーに。


 材料は揃った。家も在る。(名義上僕のではないが、この点になぜか県警は恐ろしくこだわった)


 しかし、ここで、また僕は行き詰まった。


 努力は恐ろしい。

 努力はすべてを彼岸の彼方に追いやってしまうのだ。そうだ家にいるのは僕だけではない。家には家族が住んでいることを忘れていたのだ。

 この家には、上は年金をパチンコにつぎ込み浄瑠璃を習う祖母から、他の家族とは違うものを食べている主婦の母親、そして家にいる限り一切役に立たない父親、恋をするより、恋をすることに恋している大学生の兄、下は散歩と食事しか興味のない犬がいる。

 もし、僕がマッドサイエンティストやソシオパスなら、ここで家族を全員抹殺していただろう。

 しかし僕は違う。このへんも警察にはもう一つ理解してもらえなかった点だ。

 家族が一つの家で一緒に住んでいるということを、僕は受け入れる。それが家族というものなら尊重もしよう。

 このあたりから、僕は行き詰まったりしなくなった。

 これが難事業だということを理解しつつあったのだ。今思うと、プロティン飲んで腕立て伏せしているほうが楽だったかもしれない。


 日中、母のいる前で家の壁に穴を開けたりするのは、さすがに不味まずいだろう。

 本当に泣き叫ぶか、この時点で警察を呼ばれていたに違いない。

   

 作業はめったに訪れない、僕以外の家族が全員出かけている時間か、夜中に音を立てずに行うことになる。学校にはちゃんと行かなければいけないので、ある程度は睡眠時間は確保しなければならない。

 毎晩、少しづつ、確実に、 すべては、ナイス&スムーズに、そして幾晩もかけて。


 これは、実はここに書いてはいけないし、誰にも喋ってはいけないことになっているのだけど、こんな一人よがりな散文を読んでくれているあなたけに少しだけ教えよう。

 もうこの家ロボットに名前はついていた。ザクが映画にまで登場するロボットの名前なら、これもありだろう。

 この家ロボットは"BOKU"ボクという。

 BOKUは、電気で動く。最初は、灯油ストーブを開窯かいようして灯油で動かそうかと思ったが、家というものにはありとあらゆる電気ガス水道といったライフラインがつながっていて、動かすときには、全部バイパスしなければならないことに気付いたときに、いとも簡単に電気に決定した。

 操縦装置はゲームパッドだ。

 アームレイカー?。そんなのアニメの中だけの話だ。高専のロボコンでもゲームパッドは大活躍している。

 この点は、文科省の頭の良さそうな技官も賞賛してくれた。分かってくれる人は分かっているのだ。

 最初、超大なケーブルをずるずる引きずって動くかすことも考えたが、やめた。

 考えて欲しい、この何ボルトもの高圧の交流を備えた電柱がいたるところに立っている日本の国土を。

 電柱は地下埋めるべきだ。なぜなら、僕みたいなやつが一億分の一いるからだ。

 電柱のトランスはむき出しだし、いつどこからでも電気は得られるのだ。一応、最悪の安全策でどでかいバッテリーは搭載しているが。

 操縦席はもちろん僕の部屋だ。丁度南に向いている窓から外を見ることになる。二階だし視界もよく丁度良い。

 サブカメは、屋根のTV用アンテナに防犯用カメラを付けた。360度回転し、真上から真下まで180度動く。これで、理論上はほぼ全世界のビューが得られる。

 ほぼどこかの戦闘ヘリのロングボウだ。この点は、防犯用のカメラということで警察に同意ならびに若干でも共感を得られるかと思ったが、ため息とともに無表情で睨みつけられ、供述書に書かれて終わりだった。

 

 BOKUが完成した日には、僕は流石に歓声をあげ、近所を走り回ってしまった。

 ひょっとするとどこかで、この時点で警察に捕まえてほしかったのかもしれない。

 だけど、近所では僕は本当に弱い無害な人間で知れ渡っている、自身だけがつきあっているつもりになっている女性に携帯一本で呼ばれて夜中にうるさいエンジン音を立ててRVで出かける兄ほうがよっぽど迷惑がられ嫌われている。

 近所のみなさんは誰も通報しなかったし、家族は夢の中だ。


 これで、あとはBOKUを起動させるだけとなった。

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