第2話 超能力開花
私達はどこに連れて行かれるんだろう?──
そんなことを考えながら男の後に着いて行く。見渡す限り港のようだ。すると、ジローが小声で囁いた。
「俺が気を引くから、その間に逃げろ。」
「ばか、できるわけないでしょ!?」
「逃げられなかったら、どっちみち死ぬんだぞ!?」
押し問答が続いた、ジローを置いてはいけない。しかし、次の瞬間──
「痛い!!」
私の身体に痺れるような激痛が走った。
なにが起きたのかわからなかった。
「お前達逃げようなんて変なことは考えない方がいいぞ。」
瞬時にこの男がただ者ではないことが理解できた。一体どんなマジックを使ったのだろう?
「恐ろしいだろう?大人しく着いて来れば全てがわかるから俺の言う通りに動け。」
全てがわかる?どういうことだろう……
着いて行ったら最後すぐさま殺されることを考えていた。
「……とりあえず今は従った方がよさそうだね。」
「う、うん──。」
しばらく歩き、ようやく目的地に着いたようだ。目の前にはシャッターが閉まっている倉庫があった。男が手をかざすとシャッターが自動的に開いた。どういう原理なんだろう?──
「中に入れ。」
開いた先には黒いローブを身にまとった複数人の男達が待ち構えていた。これから痛ぶられ八つ裂きにされるのだろうか?
すると、1人の男がフードを外し、思いがけない一言を言い放った。
「ようこそXX研究所へ。君たちを歓迎いたします。」
は?思考が停止してしまった──
「よくぞおいでくださいました。この度は乱暴な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。あなた達に頼みごとがございますので、
どうか引き受けてほしいのです。私のことは『X教授』とでもお呼び下さい」フードをはずすと30代くらいの平凡な男性の顔が見えた。
おいでくださいましたって、お前達が誘拐してここまで誘導したんでしょうが!
「頼みごと!?人を誘拐しておいて、あなた達勝手すぎない!?なんなの?」
「まぁまぁそう怒らないでください。私達はあなた方を救うために連れ去ったのですよ。
もし私達があと一歩遅れていたら、あなた達は他の組織に抹殺されていました。」
「えっ……だって、証拠はどこ!?そう!あなた達が私達の味方だっていう証拠がないじゃない!」
「おい、落ち着けまひろ。とりあえず話を聞いてみようじゃないか。」
「ジロー!あんたはどうして落ち着いていられるのよ!」
「俺たちは現に殺されていない、それが証拠だ。見つけたらすぐ殺すはずだろう、おかしくはないか?」
「あんた、もう少し人を疑いなよ。何かに利用するために生かしておいて、そのあと殺される可能性だってあるじゃない!」
「そうかもしれないが、とにかく!俺たちは今……生きている!今は話を聞こう!」
そ、そうね、生きているだけマシか……
少し頭に血が上り過ぎたようだ。
「取り乱してすみません、お話聞かせてもらっていい?」
「あ、えぇ、まひろさん大丈夫ですか?ごほん、さっきも申し上げたように、私達はあなた方を救うために
さらいました、もちろんあなた方の味方です。
ご安心ください。その代わり頼みごとがあります。」
「で、具体的に頼みごととは?」
「はい、それはテロリスト集団『サラブレット』の企みを阻止してもらいたいんです。」
「企みってもしかしてあの世界の裏サイトに書かれていた
!?」
「はい。あのとんでもない企みです。それを阻止してもらうためにサラブレットを叩きのめしてもらいたいのです!やつらは魔獣を使って我々を襲ってくるでしょう。」
ジローが口を挟んだ。
「その〜X教授!しかし、どうやって阻止するんですか?」
問題はそこだ。地球をどうやって爆発させるかもわからないし、第一魔獣が厄介だ。
「こちらはもう情報収集はほとんどできています。地球を爆発させると書いてありましたが、あれは、大きなタルに大量の火薬を詰め込み
火力装置で強大な火を起こし、着火させるという方法らしいです。火力装置はまだ未完成らしくて──」
「火力装置を壊してしまえばいいんですかね?」
「はい、ですが、相手は魔獣で守りを固めてくると思いますので、お2人には魔獣とも戦っていただきたいのです。このチップを埋め込めば戦えます。
」
謎のチップを差し出された。不思議な形をしたマイクロチップだった。
「このチップを頭の中に埋め込むことで
その人が本来持っている超能力を引き出すことができます。
これを『超能力開花チップ』と呼んでいます。」
やっぱ今の日本の技術はすごいな、って感心してる場合じゃない!ほんとに超能力なんて引き出せるのかな?
「うーん、なんか信じられない。ほんとに使えるのかな?」
「大丈夫ですよ、ちゃんと使えますから。
しかし、練習を重ねなければなりませんけどね。使えるまで少し時間がかかりますね。
もしすぐに超能力が開花されない場合は他の頼もしいアイテムも用意してありますので
ご安心ください。」
「本当は戦いたくないけど、殺されるくらいなら戦った方がマシね。」
「その通りですよ!あなた方は地球を救うヒーローなのです!
さて、それではチップを埋める手術を行いましょうか!」
「その、私、XX研究所を疑ったりしてごめんなさい。」
「いいんですよ、気にしないで下さい!
手術は30分程で終わります!その前に
お2人には眠ってもらいますね!」
頭の上に手をかざされた、これから私の頭の中にチップを埋め込まれるのか……
どんな感じなんだろうな、でも、こういうの結構憧れてたんだよね。超能力使えるなら別にいいかも──
「はい、2人とも終わりましたよ。感想は?」
「う〜んこれといって何も感じないかな。」
「俺も同意見(笑)。」
何も違和感はない、こういうものか。
「さて、ではお2人はトレーニングルームへと向かって下さい。そこでならいくら超能力を使っても問題ありませんので……」
私達はトレーニングルームへと連れられた。
X教授がつきっきりで見てくれるらしい。
「はい、着きましたね〜。ではいきなりですが
自分が超能力を使っているところをイメージして下さい。集中して念じることが大切ですよ。
」
「まひろ、もたもたしてると置いていくぜ?」
「なんなの!?私だってこんなの余裕だし。」
「はい、お2人にはできれば急いでいただきたいのです。いつ魔獣が襲ってくるかわからないですからね。」
そうだ、魔獣がいつ襲ってきてもおかしくないんだ。なんとしても成功させないと。
「はぁぁ!──」
ジローの手から小さな火の玉が現れたと思ったら、すぐ消えてしまった。
「素晴らしいですね!ジローくんはどうやら要領がいいみたいです。」
「へへっそんな褒めるなって、こういうの得意なのかもな!」
なんか逆に怖いんだけど。バトル系の漫画とか絶対好きそうだなぁ──
あれから一時間くらい経ち、なんとジローは超能力を完璧に使いこなせるようになってしまった。
「いくぞ、燃え盛る火の玉!」
50m先に火の玉が前方に飛んでいった。ジローは凄いな。すぐに私は追い越されてしまった。
私って才能ないのかな?
「どうしよう……。私これじゃ戦えないや。」
X教授はこうなることがわかっていたような口ぶりでこう言った。
「大丈夫ですよ。こんなこともあろうかとまひろさんにはもう一つ
特別なチップを埋め込んでありますから。」
「特別なチップ?」
「はい、心の中で『アドリアーナ』と呼んで見て下さい。」
「ん?あ、はい」
私は心の中でアドリアーナと言ってみた。すると──
「はい、お呼びでしょうか?まひろ様──」
驚いて体がビクついてしまった。これはすごい、頭の中で直接話しかけられているような感覚だった。
「すごい!話しかけられた!これってなんなの?」
「はい、これは人格プログラムチップと呼んでおります。会話もできますし、サポート機能もついております。チップといっても感情がちゃんとございますので、仲良くしてあげて下さいね。」
「でもこれって戦闘で役に立つの?……」
「うふふ、アドリアーナに直接聞いてみたらどうですか?」
薄ら笑いされた、なんかむかつく(笑)
『アドリアーナ?』
『はい、なんでしょうか?あ、申し遅れましたが私No. 1のアドリアーナと申します。なにとぞこれからよろしくお願いします。まひろ様。』
『あ、うん、よろしくねアドリアーナ!
戦うときってアドリアーナは何かしてくれるの?』
『はい、私は全力でサポートさせてもらいます。戦闘時はまひろ様が私を甲冑することで身体能力が飛躍的に上がります。しかし制限時間がございますので、ご注意ください』
なにそれ、つまりバトルアニメでよくあるような合体をするってこと!?──
エスケープ・ガール 東城 クルトン @toujoukuruton
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