ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん。

黒蛹

ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん

 ばくばくごっくん。

 もぐもぐごっくん。

 むしゃむしゃごっくん。


 幾ら食べても膨れない僕のお腹の中には、きっと虫がいるに違いない。底無しの胃袋を持つ食いしん坊の大食い虫が。だからついつい食べ過ぎちゃうんだ。そしてついつい食べ過ぎても、その矢先にお腹が奥底から切なくなって物悲しい空腹感に苛まれてしまう。

 

 常に空腹の警報を鳴らすお腹を満たすには、どうしたら良いだろうか……。お腹が減って頭が回らない僕が考えた末に、弾き出した答えは単純明快でした。


 そうだ! もっと沢山のご飯を食べれば良いんだ! 今までは小さいものをチマチマ食べていたからお腹が張らなかったんだ!

 この世界は広いんだし、きっと僕のお腹を満たしてくれる最高の御馳走があるに違いない。善は急げという訳じゃありませんが、僕はすぐさま行動を起こしました。


 僕の腹の虫を治めてくれる御馳走を求めて、広大な世界を旅しました。その途中で食べられそうな食事を見付けては口に入れましたが、今までと同じく僕のお腹を満たしてくれません。


 何処にあるかな、僕のお腹を満たしてくれる御馳走は……。

 何処にあるかな、僕の心を満たしてくれる御馳走は……。


 そして長い旅路の末に、僕は漸く大きな料理を見付けました。まるでフルコースのようにズラリと一直線に並んだ料理を目にした途端、僕は思わず涎を零してしまいました。はしたない事をしてはいけないと自分に言い聞かした後、改めて心の中で呟きました。


 いただきます!!


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん


 最初の料理はヒヤッとした冷たさが舌の上を走り、噛めば噛むほど爽やかな空気が喉奥へと流れていく。まるで濃密なミントを食べ終えたかのような爽やかさになり、次の食事に向かう胃の調子を整える役割を果たしてくれた。


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん


 次の料理は凄く水々しい果物のような味わいだった。一口嚙んだ途端に大量の液体がぶしゅーっと噴き出し、僕の口の中を潤してくれる。まるで口の中に海が広がったかのように大量の液体が溢れ出すが、それを口から零さぬように注意しながら丁寧に飲み込んだ。


 さぁ、次の料理だ。


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん


 うーん、これはまるで氷の一歩手前のシャーベットだ。嚙めば噛む程に氷の破片が生まれ、それをゴリゴリと噛み砕けば口の中で氷河期さながらの冷たさが充満する。でも、この嚙み応えが癖になってしまいそうだけど、美味しいからあっという間に終わってしまった。


 少し残念な気がするけど、次の料理に移ろう。


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん


 ふむふむ、これも嚙み応えがあるなぁ。そして何よりも大きいのは嬉しいね。真ん中の部分は噛めば噛むほどに深く濃厚な味わいが口一杯に広がり、舌の味覚が歓喜で浮かれてしまう。それにコレに付随していたドーナツみたいな食べ物も中々どうして……。


 よし、お腹も良い調子で張って来たぞ! 次だ!


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん


 うーん! これは凄く大きいぞ!! 今で食べてきた物の中で一番大きいのは間違いない! 新記録更新だ!

 そして味の方だが、一番最初に気付いたのは口当たりが軽い。マシュマロや綿飴みたいに軽い食感だけど、ほろ苦いビターソース的な味が舌に広がったかと思いきや直ぐに溶けて消えてしまう。だから飽きもせず、次から次へと頬張ってあっという間に平らげてしまった。


 さぁ、次だ!


 ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん。


 んん~! デリシャス! 真っ赤な見た目を裏切らない辛さと酸味があって、その二つのハーモニーが絶妙なコクを生み出している。こんな絶品と出会えるなんて夢のようだ。


 そしていよいよメインディッシュと思しき食材に辿り着いたぞ! 青く輝くそれは、まるで美しい宝石のようだ。食べるのはおろか触れるのでさえも勿体無く思えてしまう。

 でも、僕には分かる。今までの中でコレが一番美味しい食事なんだって。僕が此処にやって来たのは、きっとコレを食べる為に違いない!


 それじゃ真心を込めて―――――いただきます!!!










「本日、NASAは異常なまでに発達したブラックホールを観測したという情報を発表しました。このブラックホールは冥王星をはじめ、各惑星を凄まじい速さで飲み込んでおり、このままのルートでいけば地球に到達するのは最低でも――――」

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ばくばく、むしゃむしゃ、がつがつ、ごっくん。 黒蛹 @kurosanagi

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