第2話 制作進行の悩み2

「はぁ…往復4時間かけて回収に行って…BGonly2カットってどういうことだよ…」


会社に戻ってきた朱音は、席につくなり、愚痴をこぼした。


「どうしたの?大倉ちゃん」


そんな朱音を見兼ねて声をかけてきたのは、一見、優しそうな爽やか青年。


「岡村さん…すみません…作監が上がりません…」

「あぁ…。村本さんねぇ。あの人、ぶっちぎるよねぇ」


話を親身に聞いてくれるこの人物・岡村芳明(30)。

現在、朱音が担当する作品「メルヘンボンバー(略してメルボン)」の制作デスク。

メルボン全体の制作の流れを仕切っている、朱音の直属の上司である。


「だいたい…設定が細かすぎませんか?全然設定が間に合ってないですよね?」


キツイ口調になって岡村に詰め寄る朱音。


「設定の追いかけは、設定制作の山田に言ってよ。さすがに俺の管轄外」

「デスク様が…設定は管轄外とか言い切っていいんでしょうか?設定が上がらなければ、原画に入れないし、納品できませんよ?」

「相変わらずキッツイなぁ。大倉ちゃん。そういうとこ好きだけど」


こうして、朱音にはヘラヘラしているように見えるが…


「戻りました…」


連日徹夜のV編間近の進行が外回りから戻ってくると…


「…二原は全部撒けたのか?」

「いえ…まだあと10カットあります…」

「…今日中に撒ききれるんだよな?撒ききれなかったら、アウトだぞ?分かってるよな?」

「…はい」

「Vは延ばせないからな」

「…はい」

「分かってるんだよな?」

「…はい」


態度が一変。急にとてもつなく怖いデスクに生まれ変わる。

普段は優しいが、スケジュールにはとにかく厳しい。ものすごく厳しい。


制作進行の悩みその②


それは…


デスクが怖い。

でも、プロデューサーの方がもっと怖い。

それ以上に、監督の方が死ぬほど怖い…。


(…ギャップが怖すぎる…)

(…いるだけで怖い…)

(…プレッシャーが半端じゃない…)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アニメ制作進行は忙しい!! さくらわか @sakura280

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ