ネットの海じゃ入水もできない

資料集めとEDと

　とある自主企画でのことだ。

　短編に仕上げれそうなネタを思いつき、ざっくりとプロットを組んで見たものの資料を集める必要が生じた。なにしろホメオパシー、不妊治療、乏精子という専門知識を要する内容を取り扱うのだ。うろ覚えの生半かな知識のまま手をつけるのは躊躇われたし、またセンシティブな問題でもあるので中途半端なことをして炎上してもたまらない。

　スマートフォンでホメオパシーについて検索すると、やはりというかニセ科学として糾弾するような記事がヒットした。しかし、これは想定済みだった。もともと効用のある療法として作中で出すつもりはなく、レメディーと呼ばれる丸薬の製法についてさえ把握できればそれで事足りた。いくつかのページを読み使えそう部分をスクラップした。

　それから不妊について調べる。しかし、私が想定していたような都合の症例はついぞ発見できなかった。検索ワードを変更したり関連ページやリンク先から別ページへ移動したりと様々な情報に当たってみたが、結果は芳しいものではなかった。

　題材とするのがもう少し穏便なものであったのならば、フィクションだからと嘘を混ぜこむこともできただろう。しかし、生命に関わるものであり事実悩んでいる人がいる問題とあってはそうもいかない。

　そういうわけでこのネタはボツとなった。

　以来、私のスマートフォンはネットをしているとED治療の広告が表示されるようになった。どんなページを訪れても、ED、EDとしつこく訴えかけてくる。あまりにも頻繁に目にするため自分が不能なのではと疑いを持ったこともあったが、もちろんそんなことはなかった。

　夜のおともとなる動画を探しているときでさえ件の広告は表示された。

　さすがにそれには頭に来て私はクッキーを削除した。

　さよならED。もう来んなよ。