第二章
プロデューサーの田中友幸が言う。
「日本は原爆で苦しんでいる……。ひどいことをアメリカはしやがる」
「じゃあ、その原爆から生まれた怪物がソ連やアメリカを襲って回るという映画はどうだ?」
と黒澤。
「いける!」
とみなが賛同する。
「原爆から生まれた怪獣……そうだなあ……ゴリラとクジラを合わせてゴジラという名前でどうだ?」
「よし、それでいこう!」
かくして、満州映画、いや満州国全体の総力を結集して、黒澤明監督作品「ゴジラ」は製作されることになったのである。
映画では、等身大のゴジラのはりぼてを作ったり、実際にハリウッドやモスクワの大セットを作り、それを破壊するなど、凄まじい労力が投入される。
李香蘭も主役級で出演する。
出来た映画は甘粕を含め、満州映画関係者全員を戦慄させる。
「黒澤明……そしてゴジラ……。こ、これはもはやただの映画ではない。これを見た者は満州の底力に心底怖気づくだろう……」
更にこの黒澤ゴジラを効果的に使うため、満州国はその戦争前線に屋外大スクリーンを設置した。ソ連兵や中国共産党に見せるためである。
大スクリーンにゴジラがソ連やアメリカを蹂躙するシーンを映すとともに、上空から阿片を飛行機でばらまき、敵兵たちに幻覚を見せた。
「満州にはゴジラという凄い生物兵器がいる!」
敵兵たちはその見事な特撮映画の出来と、幻覚も相まってそう信じ込み、前線から撤退する。
やがてその噂は全世界に流れ、「満州のゴジラ」を恐れ、ソ連、アメリカ、中国共産党は、満州国から撤退する。
甘粕は黒澤の手を握り言う。
「黒澤君、ありがとう! だが戦いはこれからだ! 満州は戦い続ける。君も「続ゴジラ」「続々ゴジラ」を作って、満州国の威力を世界に知らしめてくれ。そして占領された日本を取り戻し、全世界を満州国のものにしよう! 黒澤明とゴジラにはその力がある!」
万歳、黒澤!
万歳、ゴジラ!
万歳、満州!
歓喜の声が満州全土に響きわたる。
(了)
満州国のゴジラ @konhide
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