第五話「湖はノスタルジーでいっぱい」
人 物
明智聡太(46)オカルト研究家
小林ゆか(22)雑誌編集者
遠藤平蔵(52)ホテルオーナー
町人1
町人2
○玉湖・全景
湖の周りには廃れた遊園地やリゾートホテルなどがある。
○森・獣道
明智聡太(46)と小林ゆか(22)が背丈まである鬱蒼と繁った雑草を掻き分けながら歩いている。
ゆか「先生! 本当にこんな所にいるんですかね!?」
明智「小林君! これは未確認飛行物体の着
陸した証かもしれんぞ!」
明智が持っている写真には玉湖の近くにミステリーサークルが写っている。雑草を掻き分け歩いて行く二人。
○玉湖リゾートホテル・全景
○同・ラウンジ
他に客のいないラウンジのソファに、全身汚れ汗だくのうな だれた明智とゆかが座っている。
ゆか「またガセですかね」
明智「それでも……私は求めて止まない」
顔を上げ遠くを見つめる明智。
ゆか「私は又記事書けないと困るんですよ」
ゆか、頭を抱える。
遠藤平蔵(52)が麦茶を持って二人の近くに来て、ソファに座り麦茶を置く。
遠藤「先生、どうでした?」
明智「まあ……明日は湖の周りを探してみよ
うと思います」
ゆか「遠藤さん、本当に見たんですか? 未
確認……」
明智「小林君! 不躾な……」
遠藤「いいんですよ。まあ疑うのは当然です。
そうだ、他に町民が写真持っていたので」
遠藤、ポケットから未確認飛行物体が写った数枚の写真を出し、テーブルの上に置く。
明智「失礼」
明智、写真を持ち見る。
明智「これは良い写真ですな」
どの写真も玉湖の絶景と小さく未確認飛行物体が写っている。
遠藤「みんな見てるんです。いるんですよ」
○食堂・中(夕)
寂れた食堂。明智とゆかがカウンターに座っている。
ゆか「先生。そもそも湖に未確認飛行物体っ
ておかしくないないですか?」
明智「何がおかしい?」
ゆか「ネッシーやクッシーならまだしも、宇
宙人って……」
明智「小林君、今は海外では未確認飛行物体
は海や火山の火口から出現するというのが常識になっているんだ」
ゆか「宇宙から来るんじゃないんですか?」
明智「いちいち宇宙から来ていたらコスパ悪
いからな」
食堂の店員がカウンターに野菜炒め定食と生姜焼き定食を置く。
明智「彼らは人間が絶対に来ない場所に亜空
間を作ってワープして来るんだ」
明智、野菜炒め定食を食べ始める。
ゆか「じゃあ湖に亜空間があるんですか?」
明智「それを明日、確かめに行く」
ゆか、少しの間の後、生姜焼き定食を食べ始める。
ゆか「先生。その野菜炒め定食もやしばっか
りじゃありませんか。そんなんじゃ力出ませんよ」
ゆか、生姜焼きを一枚取り、明智の皿に置く。
○玉湖リゾートホテル・客室・中(夜)
暗い部屋で明智、古びたテレビの砂嵐の画面を見ている。
○玉湖・全景(早朝)
○同・湖畔(早朝)
潜水服を着た明智、隣に潜水服に繋がったロープを握るゆか。
ゆか「先生、こんな早朝から潜る必要ありま
すか!?」
明智「湖は広いんだ。それに見てごらん。夏
の早朝の湖の何と美しいことか……」
明智、遠くを見つめる。
ゆか「はいはい」」
明智「小林君。ヘルメットを被ったら、私は湖に入る。何かあったらそのロープを引く
から、その時は救助を呼んでくれたまえ」
ゆか「分かりました。どうかご無事で」
明智、潜水服のヘルメットを被り、湖に入って行く。
○同・湖の水中(早朝)
明智が湖の深い所を泳いでいる。
○同・湖畔(朝)
ゆか、時々スマホの時計を見ながら湖を見ている。
明智、湖から上がって来ると、ゆかに向かって首を振り、酸素ボンベを取り替え、再び湖に入って行く。
○同・同
岩に座り、うなだれている明智。
ゆかが昼食の弁当を明智に渡す。
○同・湖の水中
潜水服の明智が泳いでいる。
明智、酸素ボンベから空気が漏れているのに気づく。
空気が漏れている箇所を押さえるが、空気漏れは止まらず、急ぎ水上へ向かうが、次第に意識が薄れて行く明智。
× × ×
明智が妻と子供と笑っている。
× × ×
○同・湖畔(夕)
潜水服を脱いだ明智が倒れている。
隣に服が濡れているゆかが座っている。
明智、目を覚ます。
明智「私は? ……」
ゆか「……湖に浮かんでいるのを見つけたん
で、泳いで引っ張ってきたんです」
明智「……そうか。小林君に助けられたな」
ゆか「先生の馬鹿! 死ぬ所だったんですよ
! まだ分からないんですか! ここに宇宙人はいません!」
明智「まだ決まった訳じゃない。それに何か
を探究するには常に危険が付きものだ」
ゆか、立ち上がり、
ゆか「私がどんなに心配したか! 別れた奥
さんだってきっと! ……私は先に帰ってますんで!」
ゆか、ホテルに向かい歩いて行く。
明智、一つだけ見える星を見ながら、
明智「それでも私はこういう生き方しかでき
ないんだ」
○玉湖リゾートホテル・庭園(夜)
椅子に座りビールを飲んでいる明智。
ゆかがビールとさきイカと持ってやって来て、明智の隣に座る。
明智「……今日は心配かけてすまなかった」
ゆか、ビールを開け、さきイカを明智に一つまみ渡す。
ゆか「私も言い過ぎました。ごめんなさい」
暫くビールを飲む二人。
ゆか「先生、あれ遠藤さんじゃ?」
遠くで遠藤と町民達が話している所に近づく二人。
○同・同・同(夜)
遠藤と町民達が話している。
町民1「作りものだって気づいたんじゃ?」
町民2「作りものでもしないと、この町に観
光客は帰って来ない」
遠藤「先生方にはそろそろ帰ってもらおう」
○同・ラウンジ
明智とゆか、対面に小林がソファに座っている。
小林「もう取材も十分だろうし、先生方そろそろ……」
ゆか「私達昨日聞いたんですからね!」
小林「えっ!?」
ゆか「みんな作り物なんですよね!? 宇宙
人は最初からいなかったんですよね!?」
明智「小林君!?」
遠藤、暫くの沈黙の後、
遠藤「先生方に私達の気持ちなんて分からな
いですよ」
明智「……ありがとうございました。そろそ
ろ失礼します」
明智とゆかがホテルを出て行く。
○車中(夜)
運転している明智、助手席にゆかが座っている。
ゆか「先生は宇宙人は本当にいると思ってい
るんですか?」
明智「……小林君。この世はまだまだ分から
ない事だらけだよ。それにいた方が面白いじゃないか」
ゆか「……そうですね」
笑う明智とゆか。
明智、夜空の光っている物を指して、
明智「あれ未確認飛行物体じゃ!?」
ゆか「本当!? 行きましょう先生!」
明智「分かった!」
強くアクセルを踏む明智。
○山中(夜)
星空の下、オンボロのベンツが走っている。
読む短編映画「百人百色〜あなたの演出で〜」 ゆず⭐︎るる @yuzururu
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