うたまつり

作者 卯月

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★★★ Excellent!!!

人々の生活や雄大な景色が頭にスッと入ってきて、世界観にワクワクさせられました。
村特有のしがらみ、古くからの言い伝えもかなりしっかりと練りこまれていて、物語にのめりこんじゃいました。
これからとんでもない戦いが始まるんだっていう緊張感や、終盤のウルっとくる感動もあって、かなり完成度が高いと思います。
「圧倒的スケールで描く……」みたいな宣伝文句のCMが頭に浮かんじゃってます。

★★★ Excellent!!!

この作品のキーワードのひとつが『歌』だと思います。紙の上で音を表現することは非常に難しいことだと思いますがまるで紙面から飛び出すように歌が立体的に美しく表現されてありありと聴こえてきました。
古い慣習を守る家に生まれそれに抗おうとする主人公深雪、物語が進むとともに家の秘密と彼女の運命が明かされていきます。そして森で出会った青年の正体は一体……。

終盤の地から浮かび上がるような底知れない恐怖は表現できないほどの迫力があり息も忘れ読み入りました。
皆さんも読んでいかれませんか?

★★★ Excellent!!!

山奥にあるその村では、10年に1度、うたまつりがおこなわれる。
岩の下に封じた妖怪を抑えるため、歌媛が祭事の歌をうたうのだ。
代々の歌媛を輩出する緋方家は、村でも特別な扱いを受けており、
主人公、19歳の深雪も遅まきながら「緋方の血」を自覚し始めた。

深雪には、不思議と印象深い記憶がある。
10年前のうたまつりのころに見掛けた男。
彼は一体、何者だったのだろうか。
なぜ寂しげな様子だったのだろうか。

物語が進むにつれ、山村の女たちの心模様が浮き彫りになり、
歌媛の血に秘められた使命と宿命が深雪の身を縛ろうとする。
一方で、連綿と続くはずだった因習にも変化の兆しが現れた。
深雪が森で出会った人は──出会ってはならなかったのか?

どこか物悲しげなストーリーは、太古の記憶を見るに至り、
どうしようもない苦しみと切なさを読者の前に連れてくる。
千年の時を経て、火と風と水の情念と恋情はどこへ向かうのか。
希望を予感させる力強いラストシーンがとても印象に残った。

★★★ Excellent!!!

 深い山と森に閉ざされた村里に伝わる伝説と、歌を用いて村を護る巫女の血族の物語です。家の力関係を背景にした村の閉塞感は、主人公・深雪でなくとも逃げ出したくなるほど。登場人物たちの思惑が絡み合うなか、謎の男性と滝の音と、巫女たちの歌声が、清涼剤のように響き、癒されます。
 岩に封じこまれた妖怪との闘いは、意外な方向へ。時を超えた激しい情念と、救いを求める祈りの結末を、是非見届けて下さい。

★★★ Excellent!!!

 代表的な異種婚姻譚を挙げるとすれば、たとえば『鶴の恩返し』がある。
 鶴が人に化けて機を織り、助けてくれた青年に恩を返すという筋書きだ。
 鶴は有益な怪異としてその影を人前に現す。そして人はその美しさに魅せられるのである。

 だが、それでも正体を暴いてはいけない。

 見えざるものは観測されることでその能力を失う。

 もともと棲む世界が違うのだ。

 人は此岸に生き、怪異は彼岸に生きる。
 どんなに近づこうとしても決して結ばれる道理はない。
 
 それでも人は人智を超えた存在を求めてしまう。
 異種婚姻譚がいつの時代も人を惹きつけてやまないのはきっと、
 見えないものへの畏れ、そして憧れがあるからだろう。

 本作はこれらの情念が丁寧に描かれています。
 ハンカチを用意してから読まれるのが良いでしょう。
 

★★★ Excellent!!!

夢中で読みました。涙がとまりません……。

主人公・深雪のまわりには、世界をいろどるうつくしい言の葉に満ちています。そのふくよかな情感でもって季節を慕い、村の暮らしを慈しむ深雪は、まっすぐ伸び伸びと生きてきました。
ある日、とうとつに恋に落ち、彼女の世界はおおきく変わります。

一族による真の血縛を知ったそのとき、親しんだはずの世界は、全くべつのものに見えてしまいます。
彼女はあがき、闘い、新しい道をその手で切り開きます。

さいごは大団円ではないけれど……。
現実の世界のどこかにも、こんな哀しいえにしの物語はきっと無数にあるはず。とおい昔の、または今もどこかで。
その物語のさきは、きっと誰にも語られることも無いけれど――
『そのさき』は確かにあるのでしょう。
そう思わせてくれる、希望をもって祈りたくなる、そんな胸にジンと熱い塊をのこしてくれる、素晴らしい物語りでした……。
書籍化を切に希望しております(*´∀`*)

★★★ Excellent!!!

しっとりと繊細な語り口で描かれる、昔話に出てくる日本の風景を描いたような別世界を舞台にした、純粋な愛の物語です。あまりにも純粋過ぎて、相手を傷つけてしまうような。

読み進めていくうちに、彼らに救いはあるのかしら……とちょっとハラハラしてしまう展開も。悲しみの中に希望を見出すことも出来る、と教えてくれる、そんな作品です。ぜひ、星のきれいな夜に、しんみりと心に残る物語を読んでみて下さい。。

この作者さま、色々なジャンルの作品を書かれていて、才能にあふれている方なんだなぁ、と感心します。私は個人的に「~しか紹介する気のない観光案内」シリーズがお気に入りです。このファンタジーとは全く違った文体ですが、会話の面白さが絶妙でおススメです。