クリスマスの優しさが一人きりの寂しさと誰かといる温かさを生む

うっすらと感じる物寂しさが、ラストでほっと温かさに変わる、さり気ない優しさが素敵な作品です。

口語体の柔らかな筆致が心地よく、オフの予定もなくクリスマスにいちばん忙しく働く書店のお局さん、という設定に全く嫌味を感じません。
だけれど、その柔らかさがあるために、どこか物寂しさが感じられます。
そういうぽっかりとした感覚の中、ラストのメールに、ほっと温かな気持ちが伸びてきて、心から良かったねと思える作品でした。

作中のプレゼントを探すお父さんや選んであげる絵本、店長代理のケーキの気遣い、コーヒーの温かさなど、小道具にも優しさが詰まっています。
最初はそれが語り手の寂しさを際立たせ、ラストでは語り手を優しく包み、とても効果的だったなと思いました。

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