第9話《ダンマル》


ダンマルは黙り込んでいた。


涙を堪えながら沈黙の罰を受けていた。


いつもニコニコと笑顔が絶えないダンマルは子供組一番の怪力で、力では既に大人にも引けはとらなかった。


その怪力に明るい性格も相まって村の人気者だが、少しせっかちでおっちょこちょいな所があった。

その為に団体行動は苦手で時々しくじっては罰を受ける。


実戦での集団活動では一人のミスが全員の命の危険に繋がることも事もあり、また土属性の村は特に調和を重んじる傾向が強いので、土岸村でも団体行動での失敗には厳しい罰則を設けていた。


しかしダンマルはどんな罰でもいつもニコニコ楽しげに受けてしまう。

その光景を見た長老はダンマルが嫌がるだろう罰を考え続けたが、何を与えてもダンマルはへこたれなかった。


ある時、子供には少し厳しいとは思える村全家の水汲みを命じられたダンマルは、ニコニコと大きな声で歌いながら楽しげに作業をこなしていた。


その姿を見た長老は


「しばらく黙っていろ。」

と命じると、途端にダンマルの笑顔は消え悲しい表情で見つめ返した。その顔に長老は閃いた。


それからダンマルへの罰は沈黙になった。



土岸村の畑では沢山の里芋が栽培されており、秋の収穫祭では盛大な芋焚きが行われる。

この芋焚きを食べに屯平五村では山を越え川を越え各村の神輿が土岸村に集結する。


明日がその芋焚きだというのにダンマルはただ一人沈黙の罰を受け涙を流している。

その様子に長老は今回ばかりは厳しすぎたのかと思い、


「もう罰は終了じゃ。そんなに泣くでない。」

と優しく声を掛けたがダンマルはまだ泣き止まない。


それどころか沈黙の罰が解かれるやいなや大声で泣き始めた。


「明日は芋焚きだ~。」今度は泣き笑いだ。ダンマルは芋焚きが大好きだった。


「今年もおいしい芋焚きが食べられるよ~。」泣きながらも更に声が大きくなった。


「これで最後の芋焚きだぁ~、わぁ~ん。」しばらく泣き笑いは続いた。


ダンマル達十歳組は明日の収穫祭が終わるとしゅうにんの里へ向かうことになる。

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