沙漠の交易路の宿場町で、老いたうたびとが、
思いがけず高く澄んだ声で歌物語を紡ぎ出す。
彼の若かりし日、仕えていた王宮。
そこに嫁いできた、ひどく醜い東の国の姫のこと。
まるで唐代シルクロードのオアシス都市国家のような、
東西交通の要衝に建ち、急速に発展したその王国に、
和平交渉成立の証として、某国の姫君が送られてきた。
彼女の持ち物は豪奢で、絹や螺鈿、漆細工など。
と、風情のない歴史の教科書のような書き方をしてしまって、
(実際はもっとちまちまやらかしていた分析を削除した)
研究者型東洋史マニアの自分に、ちょっと嫌気が差した。
本作の魅力は、情緒と哀愁に満ちた世界観だというのに。
ウードの調べと柔らかな語り口に魅せられて、
物語の続きが楽しみでならない。
はるか一千年以上の古きユーラシア大陸のような、
異世界ファンタジーの王国史の空気が、すごく好きだ。