第五話 読み返すとこの話展開早すぎw

 ドアを開けて入ってきたシスター姿のその女はとても美かった。町で見かけたらシスターであることすら忘れて声を掛けてしまうほどに。

 長い茶髪はカーテンから漏れている日の光を浴び、琥珀のような色合いとなり、青の瞳と絶妙なマッチングをしている。


 その女の登場に新入り(予定)は二人揃って口をパクパクさせている。

 急にもの凄い音をたてて入って来たので驚いているのだろう。

 しかもメチャクチャ美人だからなおさら、ってとこだろうか。



 しかしこの第六騎士団に所属しているということはそれなりの欠陥があるということだ。

 

……ククク、今から見せてやるよ!この女の残念な部分をなぁ…!


そんな風に頭の中で馬鹿なことを考えていた僕は、その女に対しこういい放った。


「オイ、てめえどっから入ってきた?いや、ドアからなんだと思うけど、どうやって入ってきた?鍵は閉めといたはずだ」


「そんなこと決まってるじゃないですかぁ。ダーリンへの愛が可能にしたんです!」


「うるせぇ。僕のハニーは今たぶん自宅でゴロゴロしながら本でも読んでるよ。少なくともお前じゃねぇ」


 お分かりだろうか。この女の残念ポイントはシスターらしからぬ所である。人妻…もとい人夫を堂々とダーリンとか言っちゃってる辺り相当イカれているのが分かるだろう。


………取り敢えず。


「てい!!!」


ぶおぉぉおおん、という音をたてているチョップは、


「あだぁぁああ」


 このクソ女にクリーンヒットした………、

 ところで僕は、後ろから突き刺さる、さっきから『二股』『DV』とかヒソヒソ囁きあっていた女の子たちの視線に気づく。


ーーーーーヤバい、このままでは最低クズ野郎の烙印を押されてしまう…!


 そう思った僕はこの女を紹介する。

 どうせ後で紹介することにもなるし。


「この女のひとはナーラ。見ての通りクラスはシスターだ。光系統の魔法を得意としている。魔法の腕だけは確かだ。これから君たちの先輩となる人だから、仲良くするように。あと、変な事をしようとしたら止めるように」

 

 取り敢えず今はこのぐらいの紹介で大丈夫だろう。詳しいことは付き合っていくうちに分かってくるだろうし。


 …という所で、チョップを受けてダウンしていたはずのナーラがムクリと身体を起こし、元気一杯な声で自分から自己紹介をする。


「ハーイ、ナーラですっ。ダーリンであるシルドさんの愛人ですっ」


 

トンッ、ドサッ。


「こーゆー変な事をしたら止めるように」


  また変な事を言い出したナーラを首トンしながら、サクラと少女に伝える。 ナーラは日に日にタフになっていっているので大丈夫だろう。


 サクラたちはコクコクと頷いて…少女の方が何かに気づいたようで、捲し立てる。


 と言うか僕この少女の名前を知らない……!ど、どうしよう。


「危ないところだったわ。このノエル=エルドシアともあろう人が場の空気に流されそうになるなんて。でも、今の騒動で貴方の底が知れたわ。女に手を挙げる最低クズ野郎だってねぇ…!さあ私に決闘で負け、その団長の座を渡しなさい!」


……と思ったら自分で説明し始めたててセーフだ。

 

 今のセリフに対して色々言いたい事は有るが(問題児たちは物理攻撃でしか止まらないなど)、大人な僕はそれを飲み込み、決闘についての話をする。


「分かった。この際もうめんどくさいからちゃちゃっとやってしまおう。場所は冒険者ギルドの訓練施設。騎士団長権限で貸しきろう。それでいいかい?」


「いいわ。引き受ける理由が気に食わないけどね。それで条件は負けた方は勝った方の言うことを何でも聞く。それでいいわね。シンプルイズベストよ」


「こちらも了承した。ただその前にナーラだけホームに返したい」


「そのぐらいは良いわよ」


 了承の返事が来たので、手をパンパンと二回叩いて、ある男を呼ぶ。


「おい、ヨイチ、居るんだろう?ナーラをホームまで連れ帰ってくれ」


「了解っす」


そう言った瞬間黒づくめの男が天井から降りてくる。その姿から分かるのは鋭い眼光を放つ一対の瞳のみ。服装は真っ黒であることは言うまでもないが、それ以外で特徴なのは、まるでNINJAのような出で立ちであることだ。ずっと東にある国の斥候と暗殺者の役割をこなすクラスだという(本人談)。その男はナーラを抱き抱えると、また天井へと消えていった。



……僕の勝手なイメージだけど、NINJAって『了解っす』とか言わないとおもう。



それはさておき。



「さあ、決闘しようか。どっちが上かシロクロ着けよう。サクラさん、審判お願い出来るかな?」


 そう言うとサクラとノエルはハッと気付いたような顔になり、『は、はい』『ケチョンケチョンにしてやるわ』とそれぞれ返事した。



…ヨイチのことは気にならないのだろうか。いや、まさかもう慣れたのか…!

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無気力彼女に捧げる冒険譚 @Jotasan

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