夜は魚

しっとりと現実を飲み込んで

平然と泳ぎ続ける


とある死も

とある生も

しっとりと飲み込んで

けろりと泳ぎ続ける


地平の彼方から

久遠の果てまで

しっとりと飲み込んで

風のように泳ぎ続ける


思春期の私が書き散らした言葉も

病院で死の病に伏せっている母も

しっとりと飲み込んで

時のように泳ぎ続ける


歯の浮くような言葉など

聞こえなかったかのように

しっとりと飲み込んで

魚のように泳ぎ続ける夜よ


夜は魚

しっとりと現実を飲み込んで

平然と泳ぎ続ける





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

千景 @thousand_paysage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る